磨くということは傷をつけると言うことだ。

【元クラスメイト 菊池祐樹】

風見の事は正直いけ好かない奴だと思っていました。

良い奴だとは思っていましたよ。でも、良い奴過ぎるって言うんですか？　正直完璧超人過ぎて、好きになれなかったと思います。嫌味なんですよ。存在が。

でも、僕はあいつは実は嫌な奴だったんじゃないかと思っているんです。どうしてそう思うか？

遠藤が急性アルコール中毒になった話は知っているんですか？　ああ。そのエピソードが人の良さを表しているということですか。

僕は違うと思っていますよ。確かに、風見はあの事件の責任を被ったことで推薦は取り消されました。でも、もともと風見は希望の大学には一般入試でも余裕で入れるぐらいの実力はありましたからね。

それよりも被害が大きかったのは黒木じゃないですかね。ええ。風見と黒木は派閥争いをしていましたから。本人は当然否定するでしょうね。あまり格好のいいものではありません。というよりも、黒木が一方的に敵対視していたようなものですからね。

文化祭の二次会を企画したのは本当は黒木なんですよ。風見は黒木が企画したのに、自分が企画したと言って責任を被ったんですよ。風見にしてみれば同じ大学に推薦が決まっている黒木をかばったつもりなのかもしれません。自分なら一般入試でも入れるからと。正直、黒木は一般入試で入れるかどうかは微妙なラインでしたからね。

風見にしてみれば守ったつもりだったんでしょうけど、嫌味ですよね。黒木はプライドがズタズタにされた気持ちになったんじゃないですか。実際、黒木は大学の推薦を辞退しましたからね。そんな譲られたような推薦で大学に行くのはプライドが許さなかったんでしょう。

結局、黒木は一般入試では入学できなくて違う大学に行きましたよ。僕たちの学年であの大学に受かったのは風見だけじゃないのかな。でも、僕は思うんですよ。あれは黒木に推薦を辞退させるためにやったんじゃないかって。プライドを傷つけて同じ大学に通わせないように仕向けた気がするんです。

それに、引きこもりになった遠藤の事です。遠藤はクラスで浮いていました。酒で倒れたということで皆から避けられていました。というかはっきり言えばいじめられていた。

風見は遠藤を助けようと色々親身になって一緒にいました。一見良い人みたいな話ですよね。