【遺書 風見明日香】

3/6
前へ
/26ページ
次へ
事の発端は文化祭の打ち上げでした。あの日私は学校を休んでいました。もともと体が強くない私は少し無理をすると体を壊してしまうのです。 それでも、あの日は無理を押しててでも学校に行くべきだったと今でも後悔しています。文化祭の打ち上げでカラオケにクラスメイト皆で行きましたよね。 香苗はもともと引っ込み思案で人見知りな性格ですから、カラオケとかは苦手でした。でも、クラス皆と打ち上げすることは嫌ではなかったと思います。 問題はお酒です。彼女は真面目な性格ですからお酒を飲もうとした時に「お酒はやめようよ」と注意しました。それは声高に言ったわけでもなく軽い注意ぐらいだったはずです。 実際、彼女も皆がお酒を飲むのを頑なに止めようとしていたわけではないのです。その場の空気というものもありますし、少なくとも自分は飲むのはやめておこう。そう思った程度なのです。 でも、それを許さなかった人がいました。黒木小夜さん。あなたです。あなたが私に敵対意識を持っていたのは知っていました。私は別にあなたと対立したくなかったので、相手にせず、適当にはぐらかしていました。思えばそれが良くなかったのかもしれません。 私と仲良くしていることが多かった香苗が皆と少し違う意見を言ったことを鬼の首を取ったようにつるし上げたのです。 「しらける」「空気読めよ」「真面目ぶるなよ」「お酒ぐらいいいだろ」「それとも飲めないのか」 そんな事を言いました。集団が一つにまとまるのに簡単な方法があることを知っていますか。それは集団の敵を作ることです。香苗は黒木さんに敵にしたてあげられたのです。 お酒が入っていたことと黒木さんの統率性。集団心理それらが重なって香苗にお酒を無理やり飲ませるような空気が出来上がりました。 香苗はそれを拒否しましたが、集団にあらがえるわけもなく何杯もお酒を無理やり飲まされ続けました。 ただの悪ノリのつもりだったのでしょう。黒木さんもクラスメイトの皆も。まさか急性アルコール中毒になるなんて考えてもいなかったのでしょうね。 でも、それは起こりました。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加