【遺書 風見明日香】

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香苗は急性アルコール中毒になり口から泡を吹き意識を失いました。皆、そこでようやく事の重大性に気が付いたのです。 幸い、その場に香苗を置いて逃げる事はありませんでした。しかし、救急車が香苗のところに到着するまで2時間近くかかったのがなぜかわかっていますか? あの日、皆で話し合って救急車を呼ぼうとなった時、誰が通報したか覚えていますか? たぶん、誰も通報した覚えはないと思います。だって、あの日救急車を呼んだのは店員さんなのですから。皆さんは「救急車!」「早く救急車を呼んでくれ!」「まだ救急車は来ないの!」と叫びながら誰一人救急車を呼んでいなかったのですから。 そこにあったのは悪意ではありません。 「誰かが呼んでいるだろう」「だから自分は通報しなくてもいい」 そう言った集団心理が働いていたのです。 香苗は病院に運ばれ処置を受けましたが、お酒を飲んでいた量と処置に時間がかかったことで重度の後遺症が残りました。物事を覚えていられない記憶障害に倦怠感。 何より、色や形。親しい人の顔が見分けられないほど認識能力が壊れてしまったのです。 そのあとの事は皆さんの知っての通りです。 私が責任を被ったのは別に皆さんをかばったわけではありません。誰かが責任を被らなければ香苗の自己責任という形で退学処分がくだされそうになっていたからです。 私達の担任はそれほど無責任で自分の責任が少しでも軽くなればいいと考えているような人だったのです。 それから、私は何度も香苗に会いに行きました。香苗は私の顔を見ても私と認識できていませんでした。 会話や日常生活はどうにかできるものの、人を見分けるということができていませんでした。
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