【遺書 風見明日香】

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それでも根気よくリハビリを続けた結果、卒業式の日には香苗は人を見分ける事はできないままでしたが、日常生活を不便なくできるほどには回復していました。 だからこそ私は卒業式に誘ったのです。卒業式ぐらいは一緒に参加しようと言って。そんな事を言っていた私が当日また風邪をひいてしまうのだから本末転倒でしたが。 卒業式に香苗が参加していたことに皆さんは驚いたと思います。だって、あの中毒騒動は結局香苗が飲みすぎたから起こった出来事だと学校側には認識されていたからです。 香苗が無理矢理お酒を飲まされたと学校側に訴えれば皆さんの進学先は取り消されてしまうかもしれないと思ったんでしょう。香苗にはそんなつもりはなかったのですが、きっと言っても信じて貰えなかったと思います。 だから、あなた達は駅のホームで香苗に集団で詰め寄った。あの事を話すつもりかと。 香苗は話すつもりはないと言ったと思いますというか、言っていました。その時、私は病院に行くために向かい側のホームにいたのですから。 私が異変に気が付いて急いで香苗のいるホームに向かおうとした時、集団に詰め寄られていた香苗の体が不意にホームに投げ出されました。まるで誰かに突き飛ばされたかのように。 そして、彼女は電車にはねられた。私は今でのあの光景が目に焼き付いて離れません。 皆さんが知りたいことはここだと思います。一体誰が香苗を突き飛ばしたのか。 皆さん。自分が突き飛ばしたわけはないと思っていますよね。だって自分は押したりなんかしていないのだから。 でも、不安でもあるんじゃないですか。もしかしたら、自分の体のどこかが香苗に当たって突き飛ばしてしまったのではないかと。不安だから、誰か突き飛ばしてくれた人がいてほしいと思っているんじゃないですか? あの時、反対側のホームにいた私ならそれを見ていたんじゃないかと。そう思って、それを暴露するんじゃないかと思って皆さん、今日ここに来たんですよね?
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