磨くということは傷をつけると言うことだ。

【元不良生徒 澄 安見】

あ？　なんだよ。お前。風見の事を聞きたいって。そんなのお前だって知ってるんじゃないのかよ。高校の時の話を聞きたいのか？　別にいいけどよ。

あいつは真面目な奴だったよ。私は見たまんま不良だったからよ。二十歳を過ぎた今はそれほど言われなくなったが高校生の時は教師どもに色々目をつけられてたんだよ。そういう意味では私とは正反対な奴だった。

でも、人との距離の取り方は抜群上手い奴だったよ。あいつは誰とでも話すようなやつだったから、もちろん私にも話しかけてきたんだ。私がうるせぇって言っても何度も話しかけてきてな。正直悪い気持はしなかったよ。当時は周りの奴らは私の事を怖がって誰も話しかけてこなかったからな。私も寂しかったんだろうよ。若かったぜ。

あいつの凄ぇところは私が本当に機嫌が悪かったり嫌なことがあって誰とも話したくないと思っていた時は本当に話しかけてこなかったんだ。ただ何も言わずに側にいてくれるだけっていうのかな。とにかく空気を読むのが上手かったんだよ。

そんなこんなで、私は高校の時あいつと話すことは多かったよ。ああ。でも勘違いするなよ。私と仲良くはしていたが、あいつは悪い事は一切手を出していない。私が誘っても注意はしても自分が手を出すことは絶対になかった。

境界線をきっちりと引いていた。だから、あいつは私を更生させてやろうなんて見下した気持ちはなく対等にみていたんだろうなと思うよ。