プロローグ

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 人は、なぜ生まれて、そして、生きていられるか、というようなことを、考えたことがあるだろうか。  哲学的な話ではない。もっと生物学的な話だ。  僕らは、水がなければ生きられない。その水は、摂氏零度から百度の間でしか存在し得ない。地球という僕らの星の温度が、たまたまそのあたりだったことから、生命は誕生し、そして、今僕らが生きている。  そして、僕らが毎日あたりまえのように送っている生活も、実はそんな、ほんの偶然のように与えられた、微妙な均衡のうえに営まれているのではないか、と思ってみたことがある。  それは、まだバブルなんて言葉も知らない右肩上がりの時代の、ほんの小さな事件がきっかけだった。
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