7話「丿卜夕二」

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 丿卜の言う通り、梓はひとまず小道を進んでみることにした。小道は死体のあった道よりも更に狭く、バイクが辛うじて通れるくらいの道幅だ。車は入れそうにない。小道に入って最初の方には、死体のあった道から伸びた塀が更に続いているが、奥は少し違う。塀が無く、生け垣だけの家もあれば、仕切りは一切無い家、花壇や鉢植えで埋められている家もある。他にも車庫や犬小屋があったり無かったり、もんに獣のような彫像が付けてあったりと千差万別だが……。 「これといって取り立てて変な所は無かったですね」  暫く細い小道を歩いてみたものの、なんのことはない。どこにでもある住宅街の光景が広がっているだけだ。 「丿卜さんは、何か変わったところ、見つけたですか?」 「いや、かように言われてものう……」  丿卜さんも同じようだ。これといって変わったところは見つからなかったらしい。梓はフゥと、短いため息を一回ついて、来た道を引き返すことにした。  再び死体のあった場所に戻ると、そこには一人の見知らぬ男性が居た。念入りに血溜まりの跡を調べているところを見ると、この事件に何らかの関係者なのだろう。梓は話しかけてみることにした。 「あの……この事件の関係者さんですか?」 「ん……俺はこういう者だが」  男性はスッと胸ポケットに手を入れた。そして、取り出したのは警察手帳だった。名前は杉村叡吉(すぎむらえいきち)と言うらしい。 「ああ、警察の方ですか。お勤めご苦労様です」 「そういう貴方は?」 「私はオカルト便利屋の四季織(しきおり)梓(あずさ)というものです」 「ほう、貴方がね。噂は聞いている。少しでも非現実的なことがあるとしゃしゃり出てくる巫女さんだな。まあ、我々の邪魔だけはせんでくれたまえよ」
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