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「譫言を言う頭のおかしな詐欺師には、味方面をされるだけで迷惑だ。肝に銘じておけよ!」
杉村の声が、梓の背中に浴びせかけられる。
「やれやれ、頭の固い奴だのう」
「仕方ないですよ。むしろ、警察の行動としては全うです」
「うーむ……なれど、理解を示す者もおる。昔は隠密同心なる輩もおったのだから、これしきのことは穏やかなものだと思わぬか?」
「いつの時代ですか、それ」
梓は思わず吹き出してしまった。
「とはいえ……その隠密同心や特別高等警察……憲兵も、立ち位置的にはそうでしょうか。いい組織ではなかったですけど、警察とは別に、それらが存在した時期もあるですからね。霊能者も、以前は、そういった人達とも協力関係があったらしいですが……」
梓はちらりと後ろを向いた。杉村の姿はもう見えない。ほっと胸を撫で下ろす。緊迫した状況には慣れていて、今回のような状況だって何回も経験しているが、それだって、あんな剣幕で怒られた時は、毎回、恐怖心に駆られてしまう。
人間、完全に平気になる事なんて、できない。
「杏香さんの場合、同じ怪異や超常現象の類を相手にしていても、私よりも具体的な証拠が得られるので、その分、警察の信頼を得られやすいのでしょう。……とはいえ、杉村さんは、それも信じていない様子ですが……なんにしても、一回、戻るしかなさそうです」
「ふむぅ……有益な情報は得られなんだな」
「そうですね。残念ですが……ここは仕方がないですね」
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