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瑞輝は過去に龍の加護を受けて、強大な相手と戦った事がある。その時は、最高位の魔法だって使えたのだが……その時の力は、主に龍の加護の影響があったからこそ発揮できた。つまり、神様のような力を持ったドラゴンに、能力上昇の補助をされなければ出せないものだ。加えて、その戦いの影響によって魔力は失いかけ、今も完全には回復していない。魔力の喪失は、エミナの方が酷かったのだが……。さすがはエミナさんだと、瑞輝は感心した。
感心する瑞輝をよそに、エミナは、割とけろっとしている。瑞輝よりも沢山の魔力を失ったのに、もうこれほど力を取り戻しているということだ。
「そっかぁ、そうだよねぇ」
瑞輝は魔力を喪失したことを少し勿体無かったと思ったが、すぐに考え直した。あの時はあれしか選択肢が無かったのだから仕方がない。死ぬよりはマシだ。背に腹はかえられない。
「エミナさんは、これで本調子なの?」
「うーん……瑞輝ちゃんと初めて会う以前と同じくらいか、少し劣るくらいかな。でも、多分、こうやって感触を取り戻していけば、龍の加護無しの状態くらいにはなれると思う」
「そうなんだ、エミナさんは、前からこんなに魔法を使えたのかぁ」
あの時は分からなかったが、こうやって練習して、龍の加護や強力なバトルドレス無しの状態で魔法を多用してみると、エミナさんの魔法の資質は、さすが勇者のそれだ。瑞輝は感嘆している。
「魔力も殆ど空っぽになっちゃったし、そろそろ終わりにしようか」
「そうだね。あー、疲れた」
二人は川から少し離れ、落鳳樹(らくほうじゅ)の木の下で休むことにした。
「よっこいしょ……ああー、たまに体を動かすと疲れるなぁ」
瑞輝は最近、土日にたまに、こういった魔法の練習をするようになったが、それ以外の時はほぼ体を動かしていない。そのせいか、今日のように魔法の練習をすると、翌日筋肉痛が酷い。
「でも、気持ちいい」
体を撫でる爽やかな風が気持ちいい。この辺りまで来ると草も生えていて、天然の絨毯になって柔らかく体を包み込んでくれて、それも心地よい。
「葉が色づいてきたわ」
「あ、ほんとだね、これが真っ赤になるのかぁ」
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