第一章 彼女は

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佐々木桜は容姿端麗、成績優秀、才色兼備と 三拍子揃った完璧なやつだ。 所が、彼女には友達がいない。 普通こんな人間は、誰からも愛され、友達も 大勢いて、彼氏もいて、実に充実した毎日を過ごすようなものだと思っていたのだが、 彼女には、そのどれも当てはまらない。 彼女には人を寄せ付けんとする、何かが ある。 中学時代、彼女と同じクラスだったという 人間が彼女の事について喋っているのを 聞いた事がある。 その人によると、彼女は昔からずっとあんな 様子だったと言っていた。 誰とも喋らず、誰とも語らず、先生からの 質問などにも必要最低限の会話しかしていなかったらしい。 ただ、いつも携帯と向き合いクラスメイト達の動向を見ては、熱心に何かを書き込んでいた。 所が、聞く所によると一度だけ彼女が感情を 昂らせ喋っていたことがあるらしい。 いや、喋っていたというよりは、叫んでいたという。 それは、ある男子のクラスメイトがふざけて彼女が熱心に書き込んでいた携帯を取り上げた時に起きた。 彼女は、即座に立ちあがり「返せ」 と一言言ったという。 だが、この男子生徒はそれを無視して 携帯に書き込まれた内容を大きな声で音読し初めた。 その瞬間、彼女は筆箱からコンパスを取りだし、自分の手に突き立てた。 あああああ!!!と叫びながら、自分の手に何度も何度も突き刺し続けた。 傷口が裂けて血が吹き出し、机に赤黒い血だまりが広がっていくのをその男子含めクラスメイト全員が呆然と見つめていたらしい。 そんな事があって以来、彼女に話しかける者は誰も居なくなった。 彼女はいつも孤独だ。いつ見ても、どこで見ても...
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