出会いは突然に

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 第一。  俺は元々甘いものが苦手だ。  両腕に感じる重みと同じくらい……いや、それ以上に気が重くなるのを感じて、俺は学校から家までの帰り道にある公園のベンチにドカリと座った。 「はぁ……どうすっべ」  自分の両隣に置いた紙袋を横目で見て、頭を抱えた時だった。  一定のペースを保った、軽快な足音が近づいてくるのを感じた。  タッタッタッタッ…………  足の運び方から、かなりのハイペースなのが分かる。  だが、息切れをしているような呼吸音は聞こえない。  俺のランナーとしての血が騒ぐ。  自分のライバルになりそうなほどの脚力を感じて、ふと顔を上げると同時に、足音はピタリと止まった。  目の前には頭はボサボサ。  髭はモジャモジャ。  日焼けなのか垢なのか分からないが、黒々とした皮膚に、薄汚れた服装。  今にも臭ってきそうな……いいや。  既にプンプンと香ばしいような、生臭いような、何とも言えないフレグランスを身に纏った男が立っていた。  いかにも『浮浪者』といった出で立ちの男に見下ろされているという居心地の悪さ。  こちらからは何かを話しかけようとも思わないし、目も合わせたくもない。  なるべく相手には気づかれないように、彼のことを観察していると、一つだけ気になるところを発見した。
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