出会いは突然に

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『え? まさか。コイツ、まだチョコレートを狙っている??』  よほど腹が空いているのか?  それとも、チョコレートが大好きなだけなのか?  答えが後者であったとしても、紙袋の中には何十個というチョコレートが入っている。  一人で食べきれる量ではない。  とはいえ、彼の口からは大量の涎が溢れだしている。  まさか。  いや。  マジか?  俺は意を決して尋ねてみた。 「まさか……まだ欲しいのか?」  そういうや否や、ロックバンドのコンサートでよく見かける高速ヘドバンのように、頭を上下に激しく振り出す男のあまりの狂気じみた様に、思わずたじろいだ俺は、「あ……じゃ、じゃぁ、やるよ」といって、二つある紙袋のうちの一つを彼に差し出した。  すると、目にも止まらぬ速さで紙袋を奪い取り、中身を漁りだした男は、むしゃむしゃと一心不乱にチョコレートをむさぼりだした。  そのあまりの豪快な食べっぷりは、見ていて胸ヤケがするほど。  あれよあれよという間に、紙袋一杯のチョコレートは完食されてしまった。
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