ブルーチョコレート

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バレンタインデー。 この日は私にとって憂鬱の日である。 なぜなら、今までにチョコレートを貰ったことがないからだ。 ちなみに私は嫌われているわけでも好かれているわけでもない。 平凡な高校二年生だ。 そんな自分の回想を頭の中で呟きながら、下駄箱を開ける。 そして私はそれを素早く閉めた。 あった……と心の中で呟いてみる。 その扉をまた開ける。 そこにあったのはチョコレートではなく、青い手紙だった。 (いや、待て。あれは殺人予告かもしれない。いや、男子の誰かがわざと入れたか。女の可能性は……ないな。まさか靴の中に画鋲が入っていてそれを隠すために。っていうかそれイジメ?) そう思いつつもその手紙を手にする。ありがたいことに画鋲は入ってなかった。 (そもそもイジメられる理由も恐らくないだろう。なぜなら、私は平凡だから) 青い手紙ではあるが、正確に言うなら封筒が青いだけだ。その封筒のフタをめくって中身を見た。 中には何も入ってなかった。 いや、違う。 開かれたフタの部分の裏側に 『廊下の先の掲示板の右端の上から四番目の紙を探れ』 と書かれていた。 下駄箱を閉め、私は緑色の表面をした掲示板を見てみる。右端の上から四番目。つまりした右端の下から一番目にあるポスターだった。 『健康だより インフルエンザや風邪などの病気が流行まってます。手洗い・うがいはよくしましょう』 と書かれていて下にイラストが軽く書いてあった。 このポスターに誤字があるのを見つけて保健室の先生に言ったことがある。 「先生、これ『流行まってます』になってますよ。『ま』がいらないです」 「そうだよ」 「そうだよ、じゃないですよ」 「そうか。じゃあ、せっかく文字やイラストを書くのを手伝ってくれた彼女に『間違ってるから直せ』って言おうか。せっかくイラスト凄い出来なのに、泣くだろうなぁ。不登校になるだろうなぁ。そういや、他の生徒達もそう言ってたからなぁ。めんどくさいしなぁ」 「今、最後だけ私情入ってませんでした?」 「かわいそうだろうなぁ……」 「それで誰なんですか?」 「〇ちゃんだよ」 そんな流れで結局、この状態のままになったのである。私はその子の名前を忘れてしまった。身近にいてそんな才能があったのか、と思っていた子だった。 そのポスターの裏にはまた青い封筒が挟まれていた。 私は一番下の画鋲だけを外し、何とかそれを取って画鋲を元に戻した。
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