ブルーチョコレート

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その封筒の中身はまたしてもない。しかし、フタの裏にはやはり書かれていた。今度は 『二階に行って八番目の右側の上の窓を見て』 と書かれていた。 私は言われた通りにする。 開かれてない窓ガラスに支えられるかのようにそれは置いてあった。私は困った。私の背では取れない。 私は窓を開けて足を上げて銀色の部分に立とうとした。 しかしその瞬間、勢いよく後から下に向けて手を引っ張られた。 ちぎれるかと思った。 私は後ろを見る。 そこには背が高い親友の近藤剣城(こんどうつるぎ)がいた。バスケ部のエースでもある。 「お前、何やってんだよ。何か辛いことがあったらまず俺に言えよ。相談に乗るからよ。もしかしてチョコか?俺の分けてやるぞ?」 彼は誤解している。私がここから飛び降りようとしたのだろうと勘違いしている。あくまでここは二階だが。 「ごめん。だけど、違うんだ。飛び降りようとしたわけではない。というか飛び降りるなら屋上から……」 私は彼の顔を見て言葉が止まってしまった。本気で男泣きしている。彼が涙脆いことは親友だからこそ知っている。いや、彼が涙を見せるのは唯一私しかいないことも心得えていた。バスケの試合に負けた時だって私にだけ教室でその日のことを語って涙を見せていた。だからこそ冗談はやめるべきだった。私は話を進めることにした。 「とにかくアレが取りたい……あっ……」 私は言った後に後悔した。親友であってもこのことは隠すつもりでいた。騒がられるのも嫌だから。しかし親友は……。 「アレか。お安い御用」 彼はジャンプして軽々とそれを手にした。そして微笑んで私に渡した。 「安心して。俺は何もしてない。触れてないから。それと俺は先にクラスに行くよ。見られたくないだろ?」 近藤はそう言って手を振って廊下を歩いて行く。途中でなぜかガッツポーズを一瞬だけしていたが。 私は思い出した。 秋のある日、私は青空に拡がる一本の飛行機雲を見ながら廊下を歩いてた。 その時、女子生徒にぶつかったんだ。 困ったことにそのぶつかった子の姿は思い出せなかった。だが、メガネをかけてないことだけは覚えていた。 「痛っ!!」 両方同時にその言葉を発した。 「ごめん。〇〇さん」 「こちらこそごめんなさい。内海くん」 内海とは内海誠(うつみまこと)、私の名前である。 「おーい、うつみん。授業始まるぞー」
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