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「…… 本当に申し訳ない!だが、今の私ではキミを幸せにしてあげられない………だから…」
彼女を見つめていられなくて逃げるように俯き視線を逸らすとつい反射的に言葉まで濁らせてしまう。
「嫌よ!! 幸せかどうかは私が決める!……だから別れるなんて言わないで………私……貴方が居ないと…。」
そんな私に形振り構わず彼女…ノリコは泣きながら私にすがり付いてきた。
──── だけど私の決意は変わらない。
「…… ノリコ、最後まで私の話を聞いてくれ。」
彼女の両肩に手を置いた私が情けなく震える声でそう囁くと、ノリコは私の胸元に沈めていた顔をあげ素直に頷き、涙で濡れた瞳で私を見つめてきた。
「…… 私はキミを幸せにしたい。心からそう思っている…」
「だったら!!」
私の発言を遮るノリコを彼女の目の前で手を翳しやんわり抑える。
「だけど!…… 今の未熟者な私じゃ駄目なんだ!!…… だから…社会人として、一人の男として…心身共に立派になるまで……それまで待っていてほしい…こんな事を言うのは狡いだろうけど……どうか許して欲しい。」
狡いと解っているからこそ、またしても彼女の顔を見れなくて、俯いてしまった私の頬に突如暖かい温もりを感じ、思わず顔をあげると溢れんばかりの涙で瞳を揺らしながらも、優しく微笑むノリコと目があった。
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