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「…… 私とノリスケさんだと『海苔』だけだもんね。……ノリとノリだと『海苔ふりかけ』か『海苔茶漬け』にしかならないもんね……」
そう言うとノリコは自嘲気味にフッと笑い、
「地味で素朴な『海苔ふりかけ』だと…色鮮やかで風味も相性も良い『ノリタマ』には敵わないね」
ガタッ!と音を立て思わず椅子から立ち上がった私をまっすぐ見据え、あの時と同じ、胸が張り裂けそうな笑顔を見せるとノリコは『幸せになってね』と踵を返し、去ってしまった。
何も言えず立ち尽くして去っていくノリコの背を見つめていると、まるであの日のように暖かい温もりを感じた。
─── あの日と違うのは、温もりを感じたのが頬ではなく両肩だ。
「あの子の為にも……私達『ノリタマ』は幸せになりましょう」
「………… あぁ。」
予期せぬ修羅場にも関わらず、複雑な笑みを浮かべながらも優しく告げるタマミの声に私は右肩に置かれた手を震える手で握り返した。
──────────────────── Fin.
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