スニーカーの神様

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「おっぱいのあるドラミとおっぱいのないドラミどっちがいい?」 兄貴は病院のベッドの上で、そんなことを言った。唐突に聞かれたその質問に対して、面を食らってしまったものの、俺は言葉を選びながら誠実に答えようと努めた。 「あのさ、兄貴。そもそもドラミにはおっぱいはないと思…」 「違う!ドラミにはおっぱいはあるんだ!兄ぃが言ってたんだよ!……兄ぃ?兄ぃはどこだ!?兄ぃに会わせろ!」 その物凄い剣幕で喚き出す兄貴は整形外科から連れてこられたガタイの良いリハビリ師達に押さえつけられ、医師に鎮静剤を打たれる。 暫く暴れていたものの、少しずつその勢いはなくなって、意識が遠のいてきたのか、目がとろんとしてきた。 「兄ぃ…兄ぃは…どこだよぉ…会いてぇよぉ…」 最後には一筋の涙を流して、そっと目を瞑って寝息を立て始める兄貴。その穏やかながらも寂しそうな顔を見ていると、胸が張り裂けそうになる。 「もう落ち着いてきたので、大丈夫ですよ」 心中を察してくれたのか、その場にいた看護師にそっと背中を撫でられる。その温かさを感じると、抑えていた涙が思わずグッと込み上げてきた。 「兄を…兄をよろしくお願いします…兄貴…またね」 精一杯の言葉を伝えて、病室を後にする。 扉を閉める前にもう一度、兄貴の安らかに眠るその寝顔を見て、そっと扉を閉じた。
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