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「ひろし! 文句言ってないで食べなさいよ。卵ってプロテインみたいなものよ」
「生卵で卵ご飯にする民族って、なかなかいないはずだけど……」
ひろしはしかたなく、卵ご飯にして食べることにした。
「!」
卵ご飯。日本で食べる卵ご飯の味がした。米の炊き込みも日本の味、醤油も日本の味。ノリはパリパリ、味噌汁にはしっかり煮干しのダシの味がするし、お新香も業務用ではなくちゃんと浸けたもの、メザシは香りが高く骨まで食べれる。風干しをしっかりやっているようだった。
「日本人に生まれて良かったかも……いや、ここ日本じゃないけど」
食事を終えて、ひろしは意外と満足した。
アリシア、ジュリアス、セレナも食事を終えた。
「ふう……じゃあ、みんな出発しようか?」
勇者ひろしは湯飲みに注がれた、番茶を一口飲んだ。
「ひろしさん~その前に王様に挨拶しないとです~」
「ああ、そうか。一刻も早く勇者として活躍してモテないと。でも、怖いからさっさと終わらせたい」
ボヤいてみる。
「ひろし……元の世界に帰りたがる心情はわかるんだけど、日本に帰ってなにかすることあるの?」
「………」
アリシアの言葉に考え込んだ。仕事が二の次で、毎日ゲームやって、ブログの更新が生き甲斐……彼女なし。
「ひろしさん~なんで泣いてるです~?」
「いや、オレって……つまらない男だと改めて思ってさ……」
趣味に生きる人生も選択のうちだけど、だからってそれが立派かどうかは、また違う話です。
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