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「ひろし……勇者なんだから、もっと自信を持って」 「自信を持てって、この世界のことよく知らないし、魔王がしょぼいし、なんか人々のために立ち上がるとか、そういう感情が湧かない」 「ひろし君……サプリメント食べるかい?」 「いらねぇ……」  ジュリアスは気を効かせたつもりだろうが、断った。 「お~い! 勇者たち! 入るぞい!」  声がして扉が開く。ロバーズ国王であった。 「あ、おはようございます。今から挨拶に行こうかと」 「ひろしよ、そうかそうか。実は忘れていたが、渡す物があってな」 「渡す物?」  ロバーズ国王は、フタのついたプラスチック製の箱をひろしに渡した。タッパです。 「これは?」 「奈良漬けじゃ」 「この世界に奈良あるんかい!?」 「それはともかく……」  ロバーズ国王は流した。 「勇者に漬け物を持たせてなにしようってんですか?」  ひろしは半眼で聞いた。 「魔王さんに渡してほしいんだよね。ほら、おすそ分け貰ったからさ」 「昨日のリンゴですか」 「うん、この奈良漬けはじゃの、魔王さんの大好物なんじゃ。魔王さん好きなんだよねー」 「だから魔王と仲いいなっ!?」 「いやいや、最近の御近所さんとあんまりいい関係を持とうとしない風潮じゃないか。ほら、あんまり関心とか持たないとかじゃ。王としてもっと近隣住民同士もっと触れあいをする国にしたいなと考えていてのぉ。そこでわし自ら、それを示さなきゃならんわけで、ほら国王じゃし」 「そーですか……この世界ってすでに平和じゃないですか? 勇者は本当に必要か?」 「それはともかく……」 「ともかくで流すなよ! 主人公はオレで勇者もオレでしょ!?」 「期待しとるよ」  ロバーズ国王の口調はわざとらしかった。 「もう、出発する……こんな勇者の待遇がいい加減なファンタジーゲームってあるのか?」  問いかけても、答えはでません。 「そうか、そうか。じゃあ出発してくれ! みんな勇者の出発じゃ! 勇者ひろしの伝説の一歩じゃ!」  こうして、ひろしたち一行はルートリア城から出発することになった。城の人間たちに見送られ、こうして冒険が始まることになった。
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