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営業課長に昇格した俺は、会社の前で立ち尽くしていた。
「どうすればいい? このままでは、俺に輝かしい未来は訪れない。何を目指して走り続ければいいのか……分からなくなってしまった……」
「おっす、内山! どうした? 難しい顔しちゃって」
突然声を掛けてきたのは、同期の安藤だった。
「……ちょっと考え事をしてたんだ」
「係長から営業課長にクラスチェンジしたからか? もっと気楽にやれよ。課長だからって気負いすぎだぞ! ほらっ、これをやるからさ」
「クラスチェンジって……お前は気楽でいいな」
安藤は紙袋を無理やり渡し、笑顔で去って行く。
中身は確認するまでも無い。確実にチョコレートだ。
今日はバレンタインデー。
容姿端麗の安藤は甘い物が苦手。毎年、貰ったチョコレートを全て俺に渡す。
受け取った紙袋に視線を落とし、大きなため息を吐いた。
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