こだわる男

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こだわる男

「お父さん、お母さん、手のかかる娘を今日まで暖かく見守ってくれて、本当に…」 途中で声を詰まらせる新婦の目元をハンカチで拭う新郎 …やっぱりいいなぁ。 同期入社でもう10年の付き合いになる美里の披露宴 二人の馴れ初めを紹介する場面では 知人の紹介と言っていたが 美里が新郎の良治さんと出会ったのは、ネットの婚活サイトだった。 「え…それって出合い系サイト?」 「まぁそうだけど、SNS経由だから顔写真もあるし、それまでの投稿写真を通して趣味なんかもある程度わかるし…  出合い系の中では安全だよ。」 そう言って、美里に教えられて取り敢えず登録してみた未華子だったが、正直あまり期待はしていなかった。 だが サイトで出会った人とトントン拍子に話が進み、交際3ヶ月でのスピード婚を果たした美里。 全国でも有名なビルの建設を手掛ける大手不動産会社に勤務する、1歳下で31歳の良治さんは 長身で爽やかな笑顔をしていた。 サイトを通してこんな素敵な人に出会えるんだ… 美里の婚約を知らされた日から、未華子は積極的に色んな人とメッセージのやりとりを始め 既に10人ほどと面会を重ねていた。 そのいずれも、ピンとくる人はおらず 皆一度の食事で連絡も途絶えていたが 確かに危険な感じのする人は誰一人いなかった。 そんな中 ここ2週間ほどメッセージのやりとりをしている1歳下の圭太君 ほどよい間隔で、爽やかなメッセージを返してくれる メッセージのやり取りは楽しかった。 サイトを通して、顔写真も見ている イケメンというわけではなかったが、穏やかそうな青年だった。 明日の日曜日は、圭太君と初めて面会の約束をしている。 「美里ー!おめでとう!」 向けられたカメラに、幸せそうな笑顔を向けて退場していく美里に 未華子は未来の自分の姿を重ねていた。
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