66人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
落ち込んで、ふらりと訪れた帯屋町アーケードの間にある中央公園のベンチに、一人で座っていた。そこで彼に出会った。カットモデルを探しているとのことだった。
高知の片田舎の風景に、ジョージさんは似合わなかった。それくらい洗練された都会の雰囲気を漂わせていて。見た目とか、喋り方とか全部。ファッション雑誌から抜け出たような大人の男性ーーそれがジョージさんで。ついさっき同級生の男子にフラれたことも忘れて、一瞬で彼に惹かれていた。
その後、アーケードの南口へと分岐している通り沿いに、いつの間にか出来ていた彼の店へと連れていかれた。まだオープン前で、ブラインドも下ろされている状態だった。
お洒落で落ち着いた雰囲気の店内には、彼と私しかいなかった。荷物を預けた後、早速バックシャンプー台へと通された。その最初のシャンプーで、私は一気に彼の手の虜になった。
ジョージさんの包み込むような優しく細やかな指遣いに、胸が高鳴った。セット面に座ってからも、夢のような時間が続いた。
肩甲骨の辺りまであったレイヤーも削ぎも入ってない重めの髪を、肩につくくらいまでの長さに切ることにした。伸ばしていた前髪も、思いきって切ることに決めた。
ジョージさんが優しく微笑みながら、シザーをリズミカルに動かす。軽やかな鋏さばきと、変わっていく自分の姿。すっかり魔法にかけられた気分だった。
何よりも、彼の手がしなやかで綺麗で、あまりにも官能的で。抱きしめられた訳でも、キスされた訳でもない。髪を掬って切ってもらっている、ただそれだけなのに、心拍数がどんどん上昇した。
最初のコメントを投稿しよう!