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その言葉を受けた私は、ほとんど無意識に前へと飛び出していた。人の波を押しのけて進むと、リュウ少年がこちらを振り返り、無言で脇にずれる。私は彼に、すまないね、と一声かけてから、本棚の奥を覗き込んだ。
「これは……」
果たして、彼の言う通りだった。覗き込むと、奥の角の部分から、黒い機械が僅かに顔を出している。一見、ギルドで使う無線にも見えるが、サイズは明らかに小さい。
私は両手に白い手袋をはめて、ひとまずそれを取り出してみた。真っ二つに斬られていたので、断面図もよく見えたが、見慣れないコードや部品がたくさん詰まっていることしか分からない。
「こりゃあ、いったい……」
「盗聴器だよ」
思わずライナーが漏らした問いに答えたのは、例の問題児だった。彼は剣を鞘に放ってから、腕組みをする。
「前に、知り合いの家に仕掛けられてたことを思い出してさ。まさかと思って殴ってみたんだ。作動すると、ほんのり赤く光るんだけど、今まさに、本の隙間から赤い光が見えた。ビンゴだったな?」
問題児の少年は豪快に笑う。
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