GP計画

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 三機のカイルビー達はお互い庇い合いながら、ワスに次々と斬り付けて来る。だがワスはそれをどうにか防いでいた。ゲーツェーは動きが固いHPだとされていたが、その実確かに白兵戦よりも砲撃戦を第一にしている。しかしそんな機体でも、扱うパイロットさえ良ければここまで戦えるのだとワスは証明していた。カイルビー達は確かにワスを徐々に後退させていたが、決定打は与えられていなかった。 「せめて一機でも墜とせれば」  ワスは後退しつつ、相手の剣に合わせてスライサーを使っていた。そして一度ジャンプすると、一機に圧し掛かる形で迫った。  だがそれは相手に読まれていた。ワスが飛び上がり圧し潰そうとした相手はバックステップを踏んでワスの攻撃を避けた。ワスはそのパイロットの勘の良さに少々驚いた。  三機のカイルビー達はワスを囲うように展開して行った。ワスはそれを上手く防ぎつつ、相手のペースに乗らないようにだけ気を付けた。 「何で墜ちねえんだよ!」 「落ち着け、チームワークだ!」 「俺が前に出る。お前達は援護を頼む」  ワスはその三機のパイロットの言葉を聞きつつ、それでも冷静に敵を捌いていた。三機は再度連携の姿勢を取り、スライサーを突く形で放って来た。三つの光の刃がワスを貫こうとして来る。それをワスは回避したり、またはスライサーで弾いたりして上手く捕まらないでいた。  ワスは反撃に出る事とした。スライサーで三機の内の一機の突きを弾くと、そのまま敵の懐に潜り込んで、そしてそのまま斬り裂こうと狙った。そのカイルビーは咄嗟にシールドで身を守った。だがワスはそれを狙っていた。相手のシールドを思い切り蹴り上げた。カイルビーはそれで後ろに倒れそうになった。 「やらせないよ!」  そのカイルビーをフォローしに、別のカイルビーが間に入ろうとする。見事なチームワークだ。ワスはそれに感心を覚えた。 「だけど、それが君の命取りになる」  ワスはスライサーを大きく振って、援護に入った方のカイルビーの腕を狙った。その斬撃で、カイルビーの右腕に大きな傷が付く。 「やったな!」  どうやらその攻撃でそのカイルビーの右腕は使い物にならなくなったようだ。 「それでは戦えまい、退いて下さい!」 「はん。こっちには左腕も有るんだよ!」  そう言うとそのカイルビーは左腕のシールドをパージし、左腕でスライサーを構えた。ガッツが有るのは認めるが、そんな不充分な状態でワスに挑もうなどと無謀な事だと分からないのか?  そしてその隙に、ワスが蹴り飛ばした方のカイルビーも立ち上がり、体勢を整えていた。残ったもう一機も健在だ。  三機は再度同時にワスを攻めに出た。ワスはそれを受け続けた。スライサーを使い、そのカイルビーの猛攻を防ぎ続ける。だが右手が使えないカイルビーの攻撃が緩くなった事で先程よりかは戦い易くなっていた。ワスはジャンプすると、右腕を傷付けられていた方を先ず狙おうと、その背後に着いた。そしてそこからスライサーを相手の背部に斬り付けた。  しかしそれを別のカイルビーが盾で防御する。そのカイルビーはワスの攻撃を見事防いでいた。だがワスはスライサーを突き立てるようにし、その盾にダメージを与え続けた。盾は赤熱化し、そしてその表面のコーティングが剥げて歪んで行った。 「こいつ、やらせないよ!」  もう一機のカイルビーが咄嗟にワスのスライサーを撥ね上げようとする。ワスはそれを受けて、一度相手を攻めるのを止めた。これで一機は右手が使えず、もう一機はシールドに傷を負っている。残った一機にも何かしらダメージを与えたい所だ。ワスはそれを狙う事とした。  先に動いたのは矢張り敵の方だった。カイルビー三機はもう一度連携姿勢を取って、ワスに斬り掛かって来た。ワスはそれをもう一度受け続けた。徐々に戦場の先端から中の方へとワスは押し込まれて行っている。ワスは何処まで上手くこのまま相手の攻撃を受け続ける事が出来るか、多少の危機感を持っていた。矢張りゲーツェーと言えども一対多に対し適しているマシーンでは無い。いや、普通のハイプレッシャーはそういう物だ。元々決闘用のマシーンでも有ったハイプレッシャーは、一対一の戦いを大体想定して設計されている。そこを変えたのはガッハくらいだろう。ワスのゲーツェーで有っても、所詮は相手一機を順番に仕留める事を鉄則として作られていた。それはゲーツェーの元で有るガウハレス時代からそうだった。だから今この三機を同時に相手するのは、ワスとゲーツェーで有ってもかなり気を遣う事となるのだった。  しかし、それでもさすがはワスだと言えよう。この絶対的不利な状況に有りながらも相手に墜とされる事無く、寧ろ互角に戦っていると言って良かった。確かに後退しつつの戦いであったが、傷を負っているのは相手のカイルビーだけだった。ゲーツェーは全くダメージを負わずに、ここまで来ていた。ワスはその三機のカイルビーの挑戦を見事に受け止めてみせていた。それはワスが異常なのだと言えた。他のパイロットにはそれは難しいだろう。マオならばまだ出来るかもしれないが。
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