GP計画

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 カイルビー達はそれでもワスを攻め続けた。ワスの攻撃を弾きつつ、更に逆にそのボディーを狙って、スライサーを振るう。三機はきっと普段から連携を第一にして来ていたのだろう。中々のチームワークだとワスは思った。  だがそれでもワスを突破する事は難しい。ワスは後退しつつも相手の斬撃を防ぎ続けた。  ただ、ワスはマオから離されて行っている事が一つ気になっていた。マオはガロ隊を相手にブラスター砲とガトリング砲で応戦していたが、ガロ隊は数でマオを圧倒しようとしているように見えた。ワスはそれをどうにか援護してやりたかった。 「余所見しているんじゃねえ!」  先程盾を傷付けられたカイルビーがそんなワスに渾身の斬撃を浴びせる。ワスはそれをスライサーを立てて防いだ。衝撃でバチンと言う音と共に、二機のスライサーが反発し合う。そこに右手が使えないカイルビーが左腕一本で斬って来た。ワスはそれをバックステップで回避した。 「ライトオンダー、遊んでないでさっさと墜とせよな」キースがわざわざ皮肉を言う。勿論助けてはくれない。  ワスは強烈な膝蹴りを放った。それで一機のまだダメージを一切負っていないカイルビーを仕留めようとした。だがそのカイルビーは盾でそれを守った。ガキンと言う金属音が鳴り響き、相手の機体が後方に下がる。しかしダメージは無いように見えた。 「ならば!」  ワスは、左マニピュレーターにスライサーを掴み、そして右マニピュレーターで拳を作った。そしてそれを思い切り相手の盾にぶつけた。スパイクフィンガーが盾を抉った。 「そんな攻撃!」  相手は逆にシールドでワスを圧そうとし出した。そこをワスはチャンスと見た。スライサーを相手の盾の傷が出来た部分に押し付けた。スライサーは弱っていた相手の盾の守備力を突破し、盾に穴を空けた。そしてワスはそのままスライサーを縦に振った。そのカイルビーは盾ごと左腕を失った。 「何なんだ、こいつ!?」 「かなりの敵だな」 「エースアタッカーって訳か」  三機のカイルビーは、或る者は右手を使えず、また或る者はシールドに傷を負い、また或る者は左腕を失っていた。ここまで来れば、ワスも楽に相手を片付ける事が出来るだろう。 「行くよ!」  ワスは加速し、一機に敵機との距離を詰めた。先ずは左腕の無いカイルビーを片付ける事とした。スライサーを大きく振って、一気に叩き斬った。そのカイルビーはそれを防御する事が出来ず、スライサーで受けるしか無かった。右手一本ではゲーツェーの馬力には対応出来ない。ワスはそれを押し切ろうとした。  だが、未だ両腕が生きている唯一のカイルビーがブラスター砲で、ワスを狙って来た。ワスはそれで一気に回避運動を取らないと行けなかった。敵はどうやらワスを近付かせないように作戦を変えたようだった。右手が使えないカイルビーは兎も角、左腕を失ったカイルビーも混じってブラスター砲で狙って来た。  更にそこにウージーがワスを狙い出した。ワスは回避に集中する事とした。一度スライサーのビーム刃を消し、相手の攻撃をやり過ごせる場を探す。廃工場が見えたから、そこの裏にワスは身を隠した。 「ウージー隊、奴はガナード社の染色工場跡に逃げ込んだ。そこを狙え!」  ウージー達がそれに反応し、一気にターボブラスター砲の火線をそこに集中させる。ワスは廃工場跡で、何とか身を隠していた。このままこの攻撃に付き合うべきだろうか? ウージー達は工場が完全に破壊されても構わないと思っているようだった。それだけ激しい攻撃が行われる。工場跡の壁が吹き飛び、烈火が走り、煙がもくもくと上がって行く。 「全くもう」  ワスは、どうにか敵の攻撃から抜け出そうとタイミングを計っていた。だがどうやら今ワスは、三機のカイルビーに加え三機のウージーにも狙われていた。さすがにそれから脱する事は難しい。ワスは反撃に出る事も出来なかった。  その時だった。無数のミサイルが、ワスを狙うウージーの内の一気にぶつかった。 「ミサイル? レザの物?」  ワスがその発射源を見て思わずその眼を疑った。そこには紛う事無きあの欠陥機、ランツォラが飛んでいた。 「ランツォラ? 誰が乗っている?」 「ワス、助けに来たよ」 「テレサ? テレサなのか? 駄目だよその機体を使ったら。ランツォラは危険なマシーンなんだから」 「それはもう過去の話だから」 「どういう?」 「まあ見てて。ワスをいたぶるつもりならば私が容赦しないよ!」  ランツォラはブラスター砲を放ち、物陰からこちらを狙っていたウージーに赤色レーザービームを命中させた。直撃を受けたウージーは爆発四散した。 「ええい、邪魔が入った。ウージーはあいつを狙え。さっきの敵は俺達三人で潰してやる」  残った最後のウージーはターボブラスター砲をランツォラに向けて放った。ランツォラは脚部スラスターを使い、空中でそれを回避し、そのまま着陸を図ろうとしていた。ワスはそれを援護するべく染色工場の化学薬品の入っていただろうコンテナの方に回り込み、そこからショートブラスター砲でそのウージーを牽制した。ウージーは咄嗟に身を守った。その間に、ランツォラは見事ワスの横に着地した。
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