GP計画

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 ワスはランツォラの足を気にしていた。またオーバーヒートを起こして爆発したりしないか? 擱座した場合、ワスでもテレサを守り切れないだろう。その危険性を孕んでいるのがランツォラの特徴だった。 「テレサ、君はその機体の危険性を理解していないのか? ランツォラは戦場に出るべきマシーンじゃない」  ワスはそれを必死に訴えた。実際前にランツォラを使った時はランツォラ自体悲惨な結果になっていた。それをワスは警戒していた。今はヴィクトールも近くに無く、若しもランツォラに問題が出来たとしてもそれでテレサを援護する手段が無い。  カイルビー達の内二機がワスとテレサを狙う。更にそこにウージーの極太レーザーも加わって来る。テレサを庇いつつ戦う事は難しい。しかしそんな事を言っていられる場合では無い。ワスはテレサをどうにかヴィクトールまで下げさせたかった。  だがテレサはやる気に満ち溢れていた。 「ワス、心配しないで。ランツォラはもう大丈夫だから」  そう言うと、ランツォラは建物の陰から飛び出した。脚部スラスターを使い一気に加速しつつ先ず右腕をだらりと下げた方のカイルビーを狙って行った。ワスはその脚部スラスターを全く無縁慮に使うテレサの気が知れなかった。そうすればまた爆発を起こすだろう。それを分かっていないのか?  しかしその時、ワスは驚くべき光景を見た。何と両脚部の脹脛が上下に分かれ、パッと展開したのだ。そしてそこから熱を逃がしているのが分かった。  それこそ、ランツォラが新たに手にした機能、ランダムストレートだった。 「何と言う……」  まさに力業だった。熱が装甲内に籠って爆発を起こしてしまうと言うのならば、その装甲板を無理矢理剥がして、内部に熱が籠る事を防いでしまおうと言うのだった。 「ワス、大丈夫だから。一緒に戦って!」 「あ、うん」  右手が使えないカイルビーにランツォラが斬り掛かった。カイルビーは左手一本でスライサーを受けた。バチバチと言う音と共に、スライサーのビーム刃同士が交差し火花を散らす。  ワスはそれを援護するべく動いた。先ずウージーに牽制のショートブラスター砲を放った。ウージーは再度ビルの陰に身を隠した。そして残った二機のカイルビーを仕留めに向かった。先ずは左腕を失ったカイルビーを狙った。ショートブラスター砲を連射し、その四肢を撃ち抜こうとする。だがカイルビーは一機では無いのだ。もう一機が透かさず盾の傷の付いていない部位でそれを弾く。  だがそれがワスの狙いだった。ワスはロングテールスタビライザーを展開し、一挙に加速を見せた。そして左マニピュレーターに握られていたスライサーのビーム刃を発生させ、そのまま友軍機を庇ったカイルビーに襲い掛かった。そのカイルビーはスライサーでそれを受けようとしたが、ゲーツェーの馬力によってスライサーを弾き飛ばされた。そして次の瞬間には首を刎ねられていた。 「何んだよ、お前!」  左手を失ったカイルビーは咄嗟にブラスター砲でワスを狙って来たが、ワスはそれを先読みし、スライサーを振るってそのカイルビーの右腕も斬り落とした。そしてそのまま回転斬りを放ち、相手の腰部を破断した。カイルビーはこれでもう戦う事は出来なくなった。  一方テレサはランダムストレートを展開しつつ、そのカイルビーを圧していた。カイルビーは左手だけでテレサの斬撃を受け止めた。斬り結ぶ二機。すると、そのままの状態でランツォラはミサイルランチャーを使った。肩の後ろ、天使のウイングのように取り付けられていたミサイルランチャーから放たれたミサイルは、ランツォラの頭部横を擦り抜け、カイルビーに襲い掛かった。カイルビーはそれで撃墜されるのだった。 「テレサ、本当に大丈夫なの?」  ワスはランツォラの脚部を気にしていた。確かにオーバーヒートは今の所起こしていないように見える。それがランツォラの弱点だったはずだ。だがランダムストレートを開放している事で熱がひっきり無しに脹脛から放出されているのが見えた。 「うん、大丈夫。ビビアンさん達に感謝だね」  ヴィクトールのメカニック達は本当に優秀だ。ランツォラを工夫してここまで使えるマシーンにしたのだから。  と、まだ油断は出来ない。ウージーがこちらを狙い、ターボブラスター砲を撃って来た。ワスはジャンプしそれを避け、そしてテレサもランツォラの脚部スラスターを満遍無く利用すると、そのまま高く舞い上がった。脚部スラスター自体の出力も上がっているのだろうとワスはそれを見て理解した。 「当たれ!」  テレサが叫び、ブラスター砲を放つ。それを相手ウージーは、ショルダーシールドで受けた。弾かれるビーム。だが敵の動きを止めると言う意味ではそれで充分だった。ワスはそのウージーの脇に回ると、そこからショートブラスター砲を放った。哀れなウージーはその攻撃を食らい、爆発して散って行った。 「ワス、有難う」 「ううん、こちらこそだよ。テレサが奴の動きを封じてくれたから、僕も簡単に狙い撃てたんだ。でも、本当に大丈夫なの? その脚部、いきなり爆発したりしない? 僕はそれが怖いんだけど」
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