GP計画

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「大丈夫よ、皆が改良してくれたんだもの。問題無く動かせるわ。私はヴィクトールのメカニック達を信じたい。彼等がしっかり働いてくれた証が、結晶がこのランツォラの脚部なのよ。皆の技術力をワスも信じてあげて」  そう言うと、テレサのランツォラのランダムストレートが一度閉じた。冷却する必要が無い時には閉じるシステムになっているらしい。恐らくランダムストレートが開いている間は、防御力がダウンするのだろう。そこだけが唯一のこの装備の弱点だろうか。 「さあ、ワス、敵を攻めましょう。この戦いは長引かせるべきでは無いわ」 「そうだね。じゃあ、行こうか」 「ええ」  その頃、カノーンに向かう巨大な影が有った。それこそGP計画の結果生まれた化け物マシーン、ギガントパピリオだった。ギガントパピリオはゆっくりとスラスターを噴かし、そのままのんびりとカノーンの方へ向かって行っていた。その傍らにはギガントパピリオ専用のお付きで有るサビレスが四機付いて行っている。また更にそれに寄り添うように、ガッハが一機近付いて行った。 「どうだ? コントロール出来そうか?」  ガッハのパイロット、フラット・カスパーはサビレスの内の一機に聞いた。 「ええ、コントロール可能です。しかしフラット様、本当にこの案で良いのでしょうか? 私はそれが良いとは思えません」 「では君は私の部下に簡単に廃人になる事を求めているのかね?」 「廃人になるとは偏見の押し付けです。ギガントパピリオのバイオコントロールシステムは、マシーンからのフィードバックを抑制しています。その為、フラット様が思う以上に安全な機体となっています。そこは皇帝陛下も理解されているはずです」 「では聞くが、何故陛下はこのギガントパピリオのパイロットに私を指名しなかった?」 「そ、それは……」 「陛下も分かっておいでなのであろう? これを思えば、ギガントパピリオを扱う際のリスクが有るのでは無いかと考える事は必然では無いか? 私はまだこのマシーンを信頼していないのでね。私の可愛い部下達もこれにはあまり触れて欲しくない。バイオコントロールシステムがどうこう以前に、こいつを預けるだけのパイロットはいないという面も有るがな」 「それはフラット様がどう采配するかで変わって来るはずです。しかし貴方はこのギガントパピリオをどうやら気に入っていないようですね? 恐れでも感じましたか?」  恐れと言われ、フラットはコックピット内でにんまり笑った。そんな簡単な物では無い。確かに恐れに近い感覚は有る。それは認めても良いだろう。だがそれはフラットの場合、ここまで強大な力を持つ事を許された自分への陛下の信頼が怖かった。 「恐れもそうだが、有難いとも思っているぞ」 「そうです、名誉有る事だと思って下さい。陛下が自らフラット様を名指しでこのマシーンを預けるように述べたのですから。しかも、このHPは圧倒的な破壊力を持ちます。それは折り紙付きです」 「では、何度も聞くが、何故陛下は私をこのギガントパピリオのパイロットに推薦しなかった? ガッハをも扱い切る私の実力ならば、このギガントパピリオで有っても使いこなせて見せると言いたいのだが? それを陛下が勧めなかった事に私は意味が有ると思うがね。まあ、ギガントパピリオのパイロットにお誂え向きな存在がいた事が救いだったな。或いはこの巨大HPをただの荷物とする事も有り得たんだ。それがこうして動かせているだけマシだろう? そうは思わないか?」 「しかし、あの者にこれを預ける事は私は反対です。若しもその刃の先が、我々に向いたら」 「そうならない事を祈りな。まあ、今のあの者にはそこまでの理性を取り戻せないだろうがな」  フラットはコックピット内で今度は邪悪に笑みを浮かべた。そうだ、あのパイロットにはもう何かを自分で考える力は無いだろう。後は上手くこちらが誘導してやれば良いのだ。それはフラットでも出来ない事は無い。ただ、念の為、フラットは自分の部下達を連れて来なかった。デスコスもその艦載機も置いて行った。 「それで、何処を狙えば良いのかな?」 「カノーンの都市ならば何処でも良いのですが、友軍に被害が出ないようにはして置かねばなりません。未だこの機体はシークレット扱いです。――まあ、これだけ大きければ隠しようが無いですがね。ベトレイヤーにもそれは同じくです。奴等がまだ本機を捉えている様子は見せていないですが、この一撃がどれだけの被害を齎すかは分かって貰えるでしょう。そういう意味でも最も効果的な場所を狙って行くのが良いと思います」 「しかし、カノーンにそのような手を使って良いのか? あそこは一応エンパイアーに協力的な面も有るが」  フラットはそれが気になっていた。確かにカノーンの人々は、フラット達に対して完全に味方をしている訳でこそ無かったが、それでもエンパイアーが求めれば彼等に武器製造という形では有るが協力してくれるだろう。言うまでも無く、彼等を下手に刺激すれば、エンパイアーへの反感を買う事は分かるはずだ。それをサビレスのパイロットはやれと言うのだった。まあ、フラットも是非このマシーンのスーパーバスター砲の威力をこの眼で見たいのだが。しかしその矛先がカノーンで良いかどうかはまた別問題だった。
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