GP計画

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 だがサビレスのパイロットはそのような事を気にしていないようだった。 「勿論、カノーンは協力的な面が有ります。しかしその実、我々に完全に従属している訳でも有りません。奴等は金さえ積めば、ベトレイヤーにも味方する可能性が高いです。そのような中途半端な態度を改めさせて、よりエンパイアーに忠誠を誓わせるには、一度痛い眼に遭うべきなのです」 「そんな物かね?」 「ええ、そんな物です。優しい顔をすれば付け上がられます。それは避けねばなりません。このギガントパピリオの圧倒的な破壊力を前にすれば、カノーンも我々に逆らう事の無意味さを知るでしょう。そうすれば、仮にカノーンがもっとエンパイアーから離れる真似をしようとしても、それを止める声が出て来るはずです。そういう一種デリケートな問題を含んでいます。それをあのパイロットに任せるのが私としても気に食わないのです」 「何とでも言うが良い。私は私の案を決して間違っているとは思っていないからな。それに、あのシステムが生きていれば、よりマシーンの発する命令に従う者の方がきっとより良い操縦を見せてくれるはずだ。あの者はそこを一応クリアー出来るだろう。若しも逆らうような真似をすれば恐ろしい事をするとも言って有るしな」 「その言葉だけで本当に作戦を成功させられますか?」 「それだけの状態にはなっている。最悪、若しも奴が我々に牙を剥くような真似をすれば、この私が直々に沈めてやるさ」  そういう意味でフラットはガッハを駆って出て来たのだ。ギガントパピリオは確かに強力なマシーンだろうが、フラットとガッハのペアには勝てまいと思っていた。それは、嘗て同じシステムで動いていたブラッディ・バトラーをフラットがガッハで倒した過去が有るからこそ言えた。 「随分な自信ですね? まあ私達も仮にこのギガントパピリオが暴走状態になれば、外から無理矢理制御システムを発動させないと行けません。入って来る情報量に脳が付いて行かない場合が有るのです。そういう意味では誰が乗っても危険だと言えますね。そこは仕方が無いです。何しろこのマシーンは、全身の全ての武器をたった一人で管理しないと行けません。それは並大抵のパイロットの操縦スキルでは無理です。そこを補助する意味で、人工知能が補助してくれるのですが、それは別にギガントパピリオだけの特色ではないです。ゴーガシャ宇宙全てで起動しているハイプレッシャーは多かれ少なかれ人工知能が補助OSの役割を果たしています。ですがこのギガントパピリオはじめ第一世代の技術を持つハイプレッシャーはその人工知能の面が大きいのです。それ故、そこで動きの単調さが出てしまいます。第一世代のハイプレッシャーが急速に代替わりを起こしたのは、マシーン第一に操縦していた事を辞め、パイロットがハイプレッシャーの操縦のメインになったからです。しかしそれは同時に或る問題を生みました。それまでの第一世代のハイプレッシャーは、マシーンが最も適した選択肢を常にパイロットに求めて来ました。それがパイロットのスキルとして足りなくともです。それ故今以上にパイロットを選ぶ兵器になっていました。それを人工知能に出しゃばらす事を辞めて、それでやっとハイプレッシャーは現代の形になります。今もバイオコントロールシステムの名残が有るから、パイロットの感情面をマシーンの性能に表す事も可能ですが、それも随分と落ち着いた物となっています。結局僅かなエースアタッカーを求めるよりも、戦いは数だという事になっているのですから、戦争は常に物量戦に有利か不利かに懸かるという訳ですね。ガロのように殆ど人工知能の扱いが単なる操縦テクニックを埋め合わせる為のサポーターとなってしまっている事は、私にすれば歎しいのですが、しかし、それが戦争の求めた物である事も事実です」  ハイプレッシャーは今もバイオコントロールシステムに近い物を装備しているという。それはマシーンにパイロットの感情を乗せる事が出来るという事だった。例えば、嘗てアゴン宙域で、フラット、デイヴィット、そしてワスとパロットにブラッディ・バトラーの混戦で、最後に放たれたバスター砲の一撃は、それを操縦しているパロット・ライトオンダーの感情が乗った攻撃だと認めても良いかもしれない。ハイプレッシャーは単なるマシーンと言うよりも生き物であると表現する方が正しいのだ。乗っているパイロットのバイタリティーに性能が左右される。だがそれは、ガロやウージーレベルのマシーンにはそういう影響は一切無いとされている。それは人工知能の機能が大きく制限されているからだった。この人工知能の性能如何がマシーンの性能面にも影響される。ガロやウージー、その他多くのハイプレッシャーは連携して戦う為に、敢えてリミッターを掛けて性能面を落としている事がエンパイアーでは良く有る事だ。そのリミッター解除をしているのが、例えばデジェ・フラッカーのグレムリン等だった。一般パイロットはそこまでの措置をしていない。それは人工知能がマシーンの戦闘力の平均化を狙っているからだ。そこがエンパイアーの強みでも有り、また弱点でも有った。このギガントパピリオはそういうリミッターのような物は排除され、人工知能とパイロットのリンクを高め、パイロットのバイタリティーをマシーンに反映させていると言うのだろう。マシーンが感情を持つなどとはフラットも馬鹿のようだとも思うが、しかし実際ハイプレッシャーはそういう存在なのだ。このマシーンをただの機械だと思う事はナンセンスかもしれなかった。
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