機械化兵士ガウハレス

GP計画

「私だって、こんな奴の一機や二機！」
　テレサはスライサーを相手のカイルビーの盾にぶつけ続けた。だがカイルビーはその盾を撥ね上げる事でランツォラに隙を作った。盾によってテレサのボディーに隙が生まれる。そこをカイルビーは右マニピュレーターに握られたスライサーで攻めようとした。
「テレサ！」ワスは思わず叫んだ。テレサが一気にピンチに陥ると見たのだ。
　だがテレサは冷静だった。そのままミサイルランチャーからミサイルを発射し、カイルビーを猛爆した。カイルビーはその攻撃をもろに浴びてしまった。気付くとカイルビーの上半身が完全に砕かれていた。
「どんなもんよ！」テレサが勝ち誇ったように述べる。「私だって伊達にパイロットをやっているんじゃ無いんだから」
　テレサはそう言うと、ゲーツェーにパッシングでウィンクを飛ばした。
「この都市の奴等、最後の一人になるまで戦うつもりらしいな」
　それはブラウ＝ハズ・ディールの言葉だった。ワスもそれは感じていた。もう投降しても良い所だろうが敵は粘り続けている。
「そうで無くちゃ楽しくねえだろ」キースは相変わらずこの戦いでも相手を殺戮する事を楽しんでいるようだった。
「だが敵は数を減らしている、狙うならば今がチャンスだ」ベキスタの指示が飛ぶ。「各機敵を町から駆逐せよ」
　ワスはこの戦いに何処まで意味が有るのか分からなかったが、少なくとも今の所友軍優勢にまで持ち込めた。それは大きいと言えた。
　ワスの横にはテレサのランツォラが付いていた。二機の連携で次々と敵機が無力化されて行く。ワスは、ランツォラの事をもう心配していない。ランダムストレートのお陰で、ランツォラの脚部の問題は解決したと見えた。そこを必要以上に警戒してもこちらの展開力が劣ってしまうだけだ。
「マオ、状況は？」
「敵部隊は撤退する気配を一切見せない。相手の指揮官機がそう命じているのかもしれない。幸いフランソワが援護してくれているからこちらは何とかなる」
　マオはフランソワとの連携を成功させたようだった。ワスはそれで良いと思った。フランソワならばマオの動きに或る程度追従出来るはずだ。フランソワは作戦開始と共に孤立して戦わされていたが、さすが生き残っていたのだ。彼女の腕も確かな物だとワスは認めていた。
「良し、テレサ、敵指揮官を探そう。そいつを潰せばこいつ等の動きも変わって来ると思う。出来るかい？」
「私は貴方に付いて行くだけよ、ワス」
「そうか。有難う、心強いよ」
　ワスはそう言うとメインスラスターを噴射し一気に加速した。ランツォラもそれに従う。ワスの眼前にはまだビルに身を隠しているウージーが見えていた。そのウージーはこちらに気付かず、ブラウ＝ハズのレザを狙撃していた。ワスは無言で突っ込み、そのウージーの背中から斬り付けた。ウージーは直撃を受け、そのままダウンし、爆発した。
　一方その頃、テレサはテレサでそんなワスを狙う敵のガロを相手していた。ブラスター砲を放ち、ワスに狙いを絞らせないように援護している。ワスは素直にそれに感謝しつつ、ショートブラスター砲を放った。その一発が、敵ガロの右足首に命中し、相手がバランスを崩す。そこをテレサが狙い撃った。ガロは爆発四散した。
　ワスとテレサの連携は次々に敵を墜として行った。ガロもウージーもカイルビーも敵では無かった。
「ワス、あれ！」
　テレサが指差す先に一台のジープが有った。どうやらそれに乗っているのがこの都市の部隊を率いていた指揮官のようだった。パイロットでは無いのか。
「あれを逃がしたら駄目だよね？」
「当然。テレサ、一緒に攻めてくれるかい？」
「勿論よ」
　ワスはそのジープの後を追う事とした。ジープは町を出て、何処に逃れようと言うのか？　そのジープを守るように敵機が展開する。
「ベキスタレッドリーダー、敵指揮官と思われる存在を確認しました。このまま追撃を掛けます」
「やるんだ、ワス君。そいつを潰せば残った連中なんか敵じゃ無い」
「おっと、その役目、このキース・ネッガーに任せては貰えないか？」
　キースが出しゃばって来る。ワスとしてはキースが攻めに出ても良いのだが、彼がどういう無茶をするかも分からない。
「ライトオンダー、座標を飛ばせ。俺が片付けてやるよ」
　キースは命令口調でワスに述べる。ワスは別に手柄の為にその役割を引き受けた訳では無い。ただ美味しい所だけを持って行こうとするキースには不快感を露にした。
「ワス君、キースに任せなさい。座標を送るように」
　ベキスタまでに命じられ、ワスは言われた通りにした。ワスは攻めてもの露払いにとジープを守りに出る敵ハイプレッシャーを相手にし続けた。
「ワス、それで良いの？」テレサが確認するように聞く。
「良いんだ。この戦いを終わらせるのにキースさんが動くと言うのならば、僕はそのお膳立てをすれば良い。結局誰がやっても結果に変化はないんだから。僕が無理に動く必要は無いさ。今はキースさんがあのジープを狙い易くする為に邪魔な敵機を退かそう。テレサも手伝ってね」