GP計画

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 ワスはそのまま彼等を妨害しようと動く敵ハイプレッシャー隊と戦っていた。ジープを死ぬ気で守るのだという気迫がワスにも伝わって来た。ワスは続けて現れる敵機を次々と倒して行った。 「キースさん、まだ!?」  ワスは彼に向かってシールドミサイルを放ったカイルビーにショートブラスター砲を撃ちつつキースを呼んだ。ジープは今、開けたエリアを走っている。狙うならばチャンスだった。だがワスがそれを潰すのは聊か敵の数が多過ぎた。敵は他の守りを捨ててでもジープの守護に回っていた。カイルビー達が盾を構えてお互いの死角をカバーしつつジープの前に壁となって現れた。ワスとしてもそれを突破するのは難しかった。こいつ等は自分達の命を捨ててでもジープを守る気なのだ。そういう敵は強い。  キースを待ってはいられない。ここはテレサに動いて貰おうか? だがテレサは今、相手の二機のガロを相手に回避運動を取っている。それではジープを追う事は難しい。矢張りここはごり押しでも自分が突破するしかないのか? ワスは、ショートブラスター砲の威力の低さを今更ながら恨んだ。  ジープはどんどんとワス達と距離を置いて行く。もう逃げられてしまう。バスター砲を使うべきか? いや、だがこの状況ではチャージをする時間を確保出来ない。キースは何をやっているんだ? ぐずぐずすればアウトなのだ。  その時だった。ワス達の上を通過する物が有った。それがレザで有る事をワスは確認した。キースがやっとやって来たのだ。 「逃がすか!」  キース機の脚部ミサイルポッドから三発ずつミサイルが発射される。それは煙の尾を引きながら、ジープに向かって進んだ。やや遅れてボウという爆音が響いた。確認するまでも無い。ジープは潰されたのだ。 「仕事はきっちりこなしたぜ?」  キース機はそう言うと、ワスの機体の横に並んで、自分の獲物を狩り出した。だが敵はもう戦意を喪失していた。それぞれ勢いを失い、ワス達に抵抗を見せなかった。それをキースが片っ端からブラスターキャノンを当てて潰していた。 「キースさん、もう良い! 勝負は着いたんだ!」 「五月蠅い、ライトオンダー。俺達を散々苦しめた奴等だ、簡単に生かして置きたくはないね」  キースはそう言うと、無抵抗の敵のコックピットを順番に撃って行った。  それをワスは止めに走った。一機のガロがキースに狙われたが、ワスがその間に入り、ショルダーシールドでキースのブラスターキャノンの攻撃を弾いた。 「ライトオンダー、てめえ……!」 「徒に犠牲者を増やして行くのが僕達の戦いでは無いはずです。キース・ネッガー中尉、そこの分別も付かなくなったのですか?」 「黙れよ。俺の中の脳内麻薬はまだ足りてねえんだ! 邪魔するのならば、お前ごと撃つぞ?」  ワスは思わず身構える。しかしそれが良く無かった。その隙に戦意を失くしていたはずの敵ガロが、背後からワスを狙い出した。そのガロはスライサーを構えてワスに向かって来たのだ。 「貴方の為にやっているのに! どうしてそれが分からないんだ!?」  ワスはそのガロの斬撃をジャンプして回避した。しかしその次の瞬間、キースのレザはブラスターキャノンでそのガロを撃った。ガロは胸から火を噴き出して、そのまま倒れて行った。 「ライトオンダー、分かったか? こいつ等に情けは不要なんだよ。甘い顔しているとこちらがやられちまう。潰せる内に潰して置くのが良いのさ。それくらいお前ならば分かっていたと思っていたが、俺としても心外だよ。まさかこちらの攻撃を邪魔するとはね。それともここで俺達のどちらが強いか決着を着けても良いんだぜ? ライトオンダーの伝説をも屈する事が出来れば、俺の名声も一気に高まるしな。それともお前が俺に勝てると本当に思っているのか? だとしたらお笑いだな。お前が強いのはそのガウハレスのポテンシャルに支えられているからだろう? それだとしても俺とレザのコンビには勝てはしないと思うがな? どうだ、やり合うか?」 「キース中尉――!」  ワスは思わず迷った。キースを野放しにすれば余計な犠牲を払う事となる。だがキースは一応友軍なのだ。それを例えば殺すなんてワスには出来なかった。 「止めて下さい!」そこに間に入る者がいた。それはテレサ・ユーデリカだった。「二人が争って何になるんです!? キース中尉、自重して下さい。ワスは実際このヴィクトールの――いえ、ベトレイヤー全体の希望なのです。それ故の行動をしています。それを貴方が一時の私利私欲の為に潰そうだなんて烏滸がましとは思いませんか?」 「そんなにライトオンダーが良いのか? 俺はライトオンダーに実力が無いのならばその立場を明け渡すべきだと思うのだよ。そう思うのは或る意味当然の事では無いか? ユーデリカは単純にライトオンダーが好きなだけだろう? それを否定は出来ないはずだ。俺は違う。俺は正しい曇りなき眼で自体を判断している。その結果、力の無いライトオンダーが出しゃばって来ると言うのならば当然潰すべきだと言いたい。ライトオンダーからガウハレスを奪ってしまえば、こんな男、大したレベルでは無いはずだ。何か勘違いをしているとすればそれはライトオンダーの方だよ」
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