GP計画

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 一先ずレッド中隊はバルバダシティの外れのハイランド広場に集まった。皆健在だった。誰一人欠ける事無くこの戦いに勝ったのだ。それは大きい事だった。 「この町の工場は何を生産していたんだろう?」  ワスはテレサに聞いてみた。 「ハイプレッシャーの部品じゃないかな? それなりの被害は出しちゃったね」  ワス達はあくまでも最低限の被害でこの町を落としたかった。だが敵が工場地帯やその周りの住宅街を戦場に選んだ事で、無傷でこの町を手にする事は叶わなかった。尤もそんな物最初から求める事が間違いだったのだろう。 「レッドリーダー、この後どうすれば良いのでしょうか?」ブラウ=ハズ・ディールが問う。 「ヴィクトールには動いて貰おうと思う。私達には補給が必要だ。それに、休息もね」  それはバイオラ艦長が許してくれるだろうか? バイオラはワス達に更に突撃を命じて来る可能性が高い。あの女艦長は、ワス達のコンディションなんか考えてはくれまい。ワス達を自分の手足の延長か何かだと思っているのだろう。それがワスは気に入らなかった。  ワスのゲーツェーの横にはランツォラが付いていた。ランツォラは今、ランダムストレートを閉じていた。この画期的な仕様のお陰で、ランツォラはやっと戦えるマシーンとなった。それはワスも歓迎するべき事だと感じた。 「ヴィクトールが私達を迎えに来てくれる事となった。皆、良く戦ってくれた。私達の有用性を見事に表したと言えよう。それは紛れも無い事実だ。さあ、胸を張ってヴィクトールの迎えを待とうでは無いか」  ワスはそう言うベキスタ自身、疲れを感じているのではないかと感じた。それだけこの戦いは消耗する物が有ったのだ。だがその事をバイオラに主張する程、ベキスタに部下達や自分を労わる気持ちは無いだろう。或いはそれはベキスタがそれだけバイオラに何か恐怖に近い感覚を持っているのかもしれなかった。 「捕まったエンパイアーの捕虜はどうしますか?」ロンドが聞く。 「それはバイオラ艦長に任せましょう。私達の独断で動く訳には行かないわ。尤もろくな扱いはしたく無いと言うのが私の正直な所だけどね」 「捕虜の扱い次第で、僕等の品性が問われますよ? それをお忘れなく」ワスは思わず口を挟んだ。 「ライトオンダーはご立派な事で」キースが揶揄する。  ワスは高台からバルバダシティを見下ろしていた。その都市は所々から火が上がり、消防隊が必死にそれを鎮火させようとしていた。あのジープに乗った敵指揮官と思われる存在を潰した事で、この町はエンパイアーから解放された。だがそんな物関係無く、町に被害を出したのは自分達でも有った。そこはワスとしても反省するべきだろうと感じた。もっと上手く戦う事も出来ただろうからだ。  ワスが、バルバダシティを見ていたその時、それは突如訪れた。最初何が起こったかワスには分からなかった。バルバダシティの中心部に、空から光が差し込んだのだ。だがそれは例えば太陽の温かい光のようなそんな物では無かった。白色に輝く膨大なエネルギーだ。それは町の中心部に深々と穴を空けた。 「何、あれ?」  テレサが疑問に感じるのも当然の事だった。その白色の光は徐々に勢いを増し、そしてそれが当たった所が沸騰しているのが分かった。爆発が連鎖的に広まり、そしてその勢いは凄まじく、地面が真っ赤に赤熱化しマグマのように溶け、それだけでは無く、そこから徐々に大地が捲れ上がって行った。それは白色光線がぶつかった所から徐々に広がって行くように展開した。地面は工場ごと燃え上がり、それぞれ砕けて吹き飛んで来た。 「退避!」  ベキスタのその声でワスもはっと我に返った。白色の光線は既に治まっていたが、そこから生じた町への被害はまだまだそこから広がって行くようだった。地面がこれでもかと巻き上げられて、黒い雲がもくもくと沸き立つ。いや、違う、それは雲なんかでは無い。巻き上げられた塵が雲のようになっているのだ。その暗雲の中では巻き上げられた物同士が摩擦し合っているのか稲光が光り輝いていた。  地面の捲れは真っ直ぐワス達の方にもやって来た。ワスはそれから逃れる事とした。一体何が起きたかはっきりする前に、先ずは逃げ切る事が大事だった。それと遅れて、ソニックブームがワス達を襲った。ゲーツェーはそれを直撃され、思わず体制を崩し掛けた。他のレッド中隊の機体もそのソニックブームでそれぞれ姿勢を崩した。いや、その一波でそれぞれ機体各所から火花が散っていた。だがそれは所詮始まりに過ぎないのだ。今、ジェームズ・バスタックのレッド12がツインハッチバインダーを持ち上げて、それから逃れようとしていた。大地が崩れて行く。ワスも、ロングテールスタビライザーを展開し、加速して脱出を図った。テレサ、マオもそれに続く。後ろでは地面が爆発を連鎖的に起こしながらワス達を追って来る。逃げられるか? ワスはバルバダシティからどんどんと距離を開けているのに、その爆発がまだ追い掛けて来る事に恐怖を感じていた。オールビューモニターでちらりと後ろを振り返ると、バルバダシティは完全に消滅していた。エンパイアーは何をしたのか? 一体バルバダに何が起こったのか? ワスには全く想像が出来なかった。
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