GP計画

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「ヴィクトールにもこれでは被害が出る!」  ワスは兎に角逃げ続けた。通信機からはひっきりなしにパイロット達の悪態が聞こえる。皆背部スラスターが焼け切るまでスピードを上げてその地面の沸騰、爆発、そして隆起から逃れて行った。  一体どれ程そうしていただろうか? ヴィクトールの姿が見えた。ヴィクトールは急上昇を掛け、地面から離れようとしていた。ワス達もそれを真似る。そして遂にワス達の足元を、その大地の崩壊が通過して行った。ワス達はそれを見ていた。まるで火山の噴火とも違うその現象に、ワスは恐怖を覚えた。爆心地の方は、地面が何百メートルも捲れていて、漆黒の雲がスパークを起こしていた。 「何だったんだ?」  思わずワスはそう聞いてしまった。だが誰がそれの答えを持っているだろうか? ワスはヴィクトールに取り敢えず着艦する事とした。その左舷格納庫に飛び込む。  格納庫の中も混乱状態だった。一体何が有ったか誰も正しく理解していなかったのだ。ただ一つ言える事はバルバダシティは完全に消滅したという事だった。そこに住む市民達ごと、吹き飛ばされたのだ。 「あれが自然現象だとは思えない」  ワスはゲーツェーのコックピットから取り敢えず降りた。そこで今の恐ろしい現象を生き抜いた事をやっと実感出来た。 「ワス、今のは一体何なの?」  同じく生還したテレサが聞く。だがそれに対する答えは誰も持っていないのだ。一体何が起こったのか。 「あれは砲撃による物だ」そう述べたのはマオだった。 「まさか! 町一つ吹き飛ばしたのよ? そんな威力の有る兵器が有ると言うの?」テレサが思わず否定する。いや、それはきっとテレサがそんなはずは無いと自己暗示を掛けているのだと言えた。 「だが他にどう説明する? あの時空から白い光が降り注いだ。あれが砲撃の一発だったんだ。エンパイアーは何か恐ろしい兵器を使っている。上空からたった一射で町一つ消し飛ばすだけの威力の有る兵器だ。それは事実だろう」 「そんな恐ろしい事――」 「恐怖で人間を支配するのがエンパイアーのやり方だよ。一体どういうマシーンがその武器を使ったか分からないが、あんな物を見せられれば、ベトレイヤーに協力的だった勢力も明日は我が身で立場を変えるかもしれない」 「そんなのって……」テレサが思わず絶句する。 「マオ、その武器に心当たりは無い?」 「無いが。ワス、それを聞いてどうするつもりだ?」 「そんな危険な武器、野放しには出来ないよ。何としても潰さないと行けない。マオがその正体を知っていれば、戦いようも有ると思ったんだけど……」 「すまないワス、私でも分からない事が有るんだ。未知の兵器だと言える。だが、確かに潰さないと行けないわね。そこには全面同意する」 「うん、潰そう。早く動かないと行けない。被害がどんどん出て来るよ」 「バイオラ艦長がどう出るかね。何とかその正体を突き止める所までには行きたいけど」  そうだ。バイオラ艦長が及び腰になれば逃げる事を選んで来るだろう。それをワスは彼女ならばやり兼ねないと思っていた。  やっと地面の爆発が終わったのだろう。周囲は静けさを取り戻していた。  フラットは満足気にそれを見ていた。ギガントパピリオの放ったスーパーバスター砲の一撃は、たった一発でカノーンの大地に大きな傷を与えた。その威力の高さに思わずフラットは、くくく、とコックピット内で笑いを堪えるのが必死だった。 「第一射、目標に命中。フラット様、第二射は何処に撃ち込みますか?」サビレスのパイロットがそう問う。 「まあそう焦るな。敵の動き方次第だ」  それにしても物凄い威力だ。やっと爆発の連鎖は治まったようだったが、カノーンの鈍色の大地に巨大なキノコ雲が上がり、その下は恐らくクレーター状になっているのだろう。このギガントパピリオを使えば、更に敵を恐怖に陥れる事が可能になると見えた。ベトレイヤーのごみ共を一掃し、エンパイアーに逆らう事の無意味さを知らしめるのだ。  ベトレイヤーはどういう動きを見せるだろうか? 恐らくこのギガントパピリオを潰しに動く者が出て来るはずだ。それにはフラット自身がガッハで向かえば良い。ギガントパピリオは今、スーパーバスター砲のクールダウンに入っていたが、直ぐにそこから次の発射体制に入れた。もう一度スーパーバスター砲を頼るのも良いが、こちらに有利になるように撃たねばならない。今回バルバダを狙ったのは、そこの指揮官が死亡した事が伝えられた事も有ったし、何よりエンパイアーの兵士達が、そこで命を懸けて戦った事への祝砲だった。彼等の犠牲を無駄にしない為にも、スーパーバスター砲での一撃で町ごと消し飛ばした。ベトレイヤーに与させるよりも消滅させた方が良いと判断したのだった。  フラットは笑みを隠さずに、次の一撃を何処に撃つかを考える事とした。出来ればベトレイヤーに着こうと考えている都市全てをこのギガントパピリオで吹き飛ばしたかったが、それだとカノーンの南半球は壊滅的な状態になるだろう。フラットはそれでも構わないと思った。
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