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この世界には、妖精さんがたくさん住んでいます。
妖精さんはとっても小さくて、人に姿を見せることは滅多にありませんが、その姿をみた人には幸せなことが訪れるとか訪れないとか。
アムル。
彼女は恋の妖精です。
アムルは2月初めのこの季節になると、女の子達を幸せにするために、ちょっとだけ見つけやすくなるみたい。
アムルは今日、町の大きなスーパーで、チョコレートの妖精のショコラとお話をしていました。
「いやー、それにしても、今年も素敵な季節が来たわね、ショコラ?」
「まあねー。一年で一番チョコの売れる時期だしねー」
「ショコラったら、お金よりも夢のある話をしましょう? 妖精らしく」
パステルピンクのウェディングドレスを身に纏ったアムルは、目を輝かせて嬉しそうです。
ブラウンのエプロンドレスにコック帽姿のショコラも、口で言うよりもどこか楽しそう。
「もうすぐバレンタインでしょ? きっとたくさん新しい恋が芽生えるわよ? 私までドキドキしてきちゃう」
「相変わらず乙女だねーアムルは。あたしはチョコレートが恋人だからなー」
「それなら私だって、恋が恋人よ?」
「それ実体すらないんだよなー概念と恋愛しちゃってるよこの子」
「そんなことよりほら、また恋する乙女が来たわよ」
アムルの言うように、バレンタインデー用に特設されたチョコレートコーナーでは、中学生くらいの女の子が難しい顔をして品定めしていました。
「ホントだ、板チョコ買おうとしてるみたいだね! でもなんか凄く周りを確認してるみたいなんだけど……」
「きっと知り合いがいないか確認してるのよ。誰にも話さずに温めてきた恋心があるのよ!」
「アムルが言うならそうなのかな~。じゃあ今日はあの子について行ってみる?」
「いいわね。私たちであの子の恋を、実らせてあげましょ?」
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