第7章 愛しているから……

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「中学入学を機に、湊が瓜生家に戻って来たことを、父親は凄く喜んだ……自分に良いイメージを持っていなくても、自分を受け入れなくても……会えないまま過ごすより、ずっと……湊がモデルになり瞬く間にトップになった時も……自分の力一つで会社を起こし、デザイナーの道を走る今もっ、自分たちの子供として……自分の血を引いたものとして……誰よりも認めて、瓜生を継ぐ者は湊しかいないと……だから、父親は言った……湊の兄として、お前は湊の支えになれと……俺が自由に過ごせたのは高校まで……父親との絆を絶ちたくない母親は、俺に瓜生の籍に入るよう薦めた……おかしいだろっ?実の息子なのに、養子なんてさ……高校卒業してから、今まで……自分の自由になんて何一つ出来ず……荒んでいったよ……募るのは、湊への憎しみ……父親に、俺の気持ちは届かない……俺の切望するもの、全てを奪う湊……そんな俺が……湊の大切なものを奪って……何が悪い?」 智先輩の、奥底の気持ちを聞いて……私に……何が言えるだろう……それでも…… 「そのために……無関係の人を苦しめるのは、違うと思います」 私の言葉に、腹をたて逆上するでもなく、 「そうだね……君の言うことは正しい……昔から、美桜ちゃんはそうだった。まっすぐで、素直で……心が清んでいて……内面も外見も……とても綺麗で……ずっと憧れていた……ずっと……想っていた……打ち明けることが出来なくても、たとえ手が届かなくても……それなのに……湊は俺の想い人さえ奪う……君の相手が湊でないなら、我慢できる……ただの高校の時の先輩として……それで終わらせれた……でもね……昨日音羽屋で君に再会して……君がお金を払うと言った時に、思い付いたんだ……」 そこで智先輩は、一度言葉を切り……微少を浮かべる。 「もっとも、湊が傷付いて……もっとも湊を苦しめる方法を……あの涼しい顔した湊の顔を、ぐちゃぐちゃに歪ませたい……俺は、どうしても……湊のその顔が見たいんだ……」
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