第7章 愛しているから……

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その言葉を聞いて……智先輩の私を見つめる目に……何故か……身体中に悪寒が走る。 湊を傷付け……湊が苦しむ……方法? 「……美桜ちゃん……君からお金は受け取らない」 小切手の封筒を、私の方へ戻す智先輩。 「でも、音羽屋が……」 「君が俺の言うことを利いてくれるなら、俺の望みを叶えてくれるなら……今後一切音羽屋には手を出さない」 智先輩の望み……? それを私がきくことで、湊が苦しむ…… 「2千万で君を買う……君を……抱かせて……」 思いも寄らない、智先輩の要求…… あの優しかった智先輩から、そんなことを持ち掛けられるなんて…… 言葉が見付からず、俯いた私の目が……智先輩の左手薬指に、はめられた指輪の存在を見付ける。 「……智先輩……結婚してるのに……」 「ああ……政略結婚ね……俺も妻も……愛し合ってる訳じゃない……彼女には他に男がいる……不貞をすることが……嫌?」 不貞は勿論嫌だ……元夫を思い出す。智先輩の奥さんに、他に男の人がいたとしても……私は加害者の立場になる…… それに……湊以外の人となんて……そんなの……絶対に嫌っ! そこに……私の携帯が着信の音を鳴らす。 着信画面には、音羽屋と表示される。 「どうぞ」 智先輩に促され、携帯に出る。 「……すみません……もしもし……え……?解体業者の人……!?瓜生専務の答え待ち……?」 梨絵ちゃんからの電話の内容に、驚きながら智先輩を見つめる。 初めから、こうするつもりで…… 私が智先輩の要求を断ったら……音羽屋を壊す…… 私に……逃げ道なんて……どこにもない…… 「……梨絵ちゃん、落ち着いて……大丈夫だから……絶対……そんなことさせないからっ!うん……じゃ……またね」 携帯を切り、智先輩を見据える。 「君のその目……好きだよ……あの頃と変わらない……君の答えに寄って、俺の行動も変わる……どうする?」 『どうする?』……なんて、訊かれたって……聴かなくても智先輩には、分かってる…… 逃げ道を塞いでるのは、智先輩なのだから……
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