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初めて恋した人に、自分の初めてを全て捧げ……愛され、求められて結婚早5年。
この幸せが、永遠に続くものだと……
信じて疑わなかった。
今日、この時までは──
「……美桜……僕と別れてくれ……」
そう言って、夫の透はテーブルの上に
1枚の用紙を広げた。
「……は?」
思いもよらない台詞に、思考が追い付かない。
この人は何を言っているの?
「美桜を嫌いになった訳じゃないんだ」
嫌いじゃない?……けど別れたい……?
毎日仕事で帰宅が遅かった透。
どんなに遅く帰って来ても、私を抱き締めて眠ってくれた。
今だって、私が作った朝食を食べ、
「美味しいよ」と言ってくれたばかり。
他に女がいた素振りなんて……
私が気付かなかっただけ?
夫婦の綻びなんて……なかった……のに
悲しいとか、裏切られたとか……
突然過ぎてそんな気持ちも浮かばない。
「別れてくれるなら、美桜が望むこと
全て叶えるよ」
その言葉が……
すーっと心の熱を奪い取る。
「何でも……?……じゃあ……」
離婚を望むこの人に、無理難題押し付けて……最後くらい困らせてやろうと思った。
想い合ってると思ってた。
愛は愛のまま……永遠のものだと……
私の愛は、たくさんの諭吉さんに変わった。
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