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持てる限りの服と、最低限必要な物を
スーツケースに詰め込んで、5年間の結婚生活を過ごした家を出た。
何て無駄な時間を浪費したんだろう……
結婚と引き換えに、大好きだった仕事も辞めたのに……
「はぁ~……」
自然と溜め息が洩れる。
今日中にと、急かした甲斐あって、
元夫は私の要求を夕方までに手配した。
実力派俳優で世間に名を馳せる元夫……
あんな最低な男だったなんてっ!
見抜けなかった自分が憎らしい。
心で悪態吐きながら、
スーツケースを引っ張り、夜の街を歩く。
交差点に差し掛かり、足を止める。
見上げたビルに、大きい広告ポスターが見える。
あ……今トップモデルの湊だ……
眼力凄い。こんな、イケメンに真っ直ぐ見つめられたら、その辺の女なんてイチコロかも……
そう言えば、あちこちに湊のポスターあるな……メンズのファッション誌の、表紙を飾るのもよく見るし……
そこで、はっと我に帰る。
……顔の良い男なんて、誰も彼も変わらない。
私はもう、間違えないんだからっ!
決意を新たに、一歩足を踏み出した。
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