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男性につられ、女性もこちらを見て、私を睨む。
え……?何でそんな目で見られなきゃいけないの?私はただの通りすがりの者なのに……女性からの視線を受け止めていると、
「……美桜っ!」
突然、名前を呼ばれた私。
「はいっ」
条件反射で返事をしてしまう。
「良かった……戻って来てくれたんだなっ!」
「……は?」
男性は私の方へ、大股で歩み寄って来る。
反射的に一歩ずつ、後退する私。
戻って来たって何?ここに来るのは初めてですがっ!そして初めてお会いしたあなたは、何故私の名前を知ってるのー!
「美桜……誤解なんだ。彼女が俺をどう思ってたって、俺には美桜しかいない。美桜だけを愛してる」
──ドキン!
一瞬にして、胸の鼓動が早くなる。
初めて会った人に、愛してると言われても、何の信憑性もないのに。
何故か、一層騒ぎ出す鼓動。
男性が一歩近付けば、私も一歩下がる。
「逃げないで……美桜」
男性が眼鏡を外し、真っ直ぐな視線を私に向ける。この目……今日、何度も見た。
私はこの人を知ってる。眼力に引き寄せられるように、私の足は後ろへ下がることが出来ない。
動きを止めた私に、近付き……そして、自分の腕の中へ引き寄せる。
強く抱き締められ、彼の体温と香りに包まれる。
今朝……5年の結婚生活にピリオドを打った私は、何故、今……トップモデルの腕の中にいるのでしょう?
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