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触れるだけのキスから、1度唇が離れ、
「……美桜……ん……」
切なさと甘さを含んだ声で名前を呼ばれ、直ぐに唇が塞がれる。1度目のキスより、荒々しく。
唇を吸われ、舐められる。
「……んっ……んん……!……い……やぁ……」
言葉を発したため、出来た唇の隙間から舌を入れられ、歯列をなぞられる。
私の逃げる舌を追いかけ、簡単に絡めとり、唾液が混ざり合う。
「……んんっ……う……んっ」
背筋がゾクゾクして、身体からどんどん力が抜けていく。立っていられなくなった私の腰に手を回して、深いキスを続ける。
互いの口から紡ぐ、水音が響く。
その音が、やけに自分の耳に響き、羞恥心を煽る。
誰かが走り去る足音が聞こえ、最後に舌を吸われ、
ゆっくり唇が離れる。
銀の糸が彼と私の唇を繋ぐ。
「……はぁはぁ……はぁ……」
まだ、息が整わない私とは違い、平然としている彼。
親指の腹で唇を拭う。
やっぱり……顔の良い男は最低っ!
女なら誰でも良くて……この男も、会ったばかりの私と、こんな……こんな激しいキスを簡単に出来る。
元夫以上の怒りが込み上げてくる。
キッと彼を睨み、
「……嘘ばかり言って……何してくれんのよっ!」
──パンッ!
彼の頬に平手打ちをかまして、震える足に力を入れ、その場を後にする。
私の後ろ姿を、切なげな目で見つめたまま……
「……嘘なんか……言ってねぇよ……」
怒り心頭で、マンションに向かう私には、彼の呟きは届かなかった。
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