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「ねえ、『コウキ』ってどんな字を書くの?」
「“光”に“輝く”で、光輝。」
宙に指先で書いてみせる。
『光輝』という名前は、結構好きだ。
響きがいいし、字もバランスがいい。
「ふふ、何だかキラキラしてて、かっこいい名前だね。」
キラキラとか、随分とファンタスティックだな。
でも、不思議と嫌ではなかった。
「そう言うそっちは『ユウ』ってどんな字を書くんだ?」
「私は“遊ぶ”に“雨”で遊雨だよ。」
「へえ、変わった字だな。」
「ちょうど私が生まれたのが六月で雨の日だったから、“雨”の漢字を使いたかったんだって。
『遊』って画数多いから、もっと別の画数の少ない字にしてほしかったけどね。」
「へえ、なるほど。珍しいけど、良い名前だと思うよ。」
「ほんと?ありがとう。」
……ほら、こんな他愛のない話、今まで女の子としたことない。
それに、さっきから自然に笑えてる気がする。
さっきまでイラついてた自分が嘘みたいだ。
「じゃあ、コウキって呼んでもいい?」
「いいよ、全然。そしたら俺もユウって呼ぶけど、いい?」
「うん、いいよ。」
『ユウ』って、女の子の名前を呼び捨てにするなんて、初めてかもしれない。
女の子のことは大抵、『○○ちゃん』って呼んでるもんな。
そうすると女の子って喜ぶし。
まあ、従姉妹のミナがいるけど……アレを女の子とはカウントしないだろ、あんなの。
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