5人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ユウは、お姉さんのこと嫌いなのか?」
ユウが苦笑いを浮かべたから、嫌いなのかなって思って。
そう訊ねたら、ユウは慌てて首を横に振った。
「違う違う! むしろ大好きだよ!
双子だと好みとかも似るから、話も合って仲もいいし。」
俺は兄弟がいない一人っ子だから分からない感覚だ。
話の合う兄弟がいたら、家に一人でいることもないんだろう。
家に一人でいるのが嫌だった俺にとっては、兄弟がいる友達がずっと羨ましかった。
秀司にも、四つ下の弟がいる。
弟がいる秀司が羨ましくて、あいつの家にしょっちゅう泊まりに行ったっけ。
「……羨ましいな、お姉さんがいるなんて。」
「コウキは兄弟とかいないの?」
「うん、俺は一人っ子だから。」
「そうなんだ。でも……一人っ子は兄弟と比べられないから、いいな。」
そう言ってユウは、寂しそうに笑った。
お姉さんのことは好きで、仲もいいのに、どうしてそんなに寂しそうに笑うんだろう。
「……一人っ子は、」
「ん?」
「一人っ子は、寂しいよ。家には遊ぶ相手がいないから。
俺、いつも幼馴染みの家に遊びに行っててさ。俺がバスケを始めたのも、そいつがバスケを始めたからで。
俺の遊び相手がいなくなっちゃうから、って、俺も真似してバスケを始めたからなんだ。」
不思議だ。どうして初めて会って数分の女の子相手にこんな話してんだろう、って思ったけど。
……もしかしたら俺は、この話を誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
.
最初のコメントを投稿しよう!