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ライバルとして意識していたとはいえ、俺の中で『玉置 秀司』という存在は、俺の憧れであり目標だった。
バスケを始めたばかりの頃の俺は、背もまだ低かったけど、それでも運動神経はいい方だったためにすぐに周りと同じレベルには達することができた。
でも、秀司のプレーを初めて見た時、初心者の俺でもすぐに分かった。
――ああ、たぶん、こいつにはいくら練習しても勝てないな、と。
何より周りの人とセンスが違った。
始めた時期にそんなに差はないはずなのに、こんなに自分と差ができるのかと思うくらい。
「――スポーツを始める理由なんて、そんなものじゃない?
私なんて、双子のお姉ちゃんと区別してもらいたくて、活発な子に見られるために始めた、なんて理由だよ。」
そう言って、ユウはおどけたように笑った。
「だから、幼馴染みの真似してバスケを始めたっていいんだよ。
大切なのは、今の自分がバスケを好きなのかってことじゃない?」
「今の自分がバスケを好きか……?」
「うん。だってさ、始めた時期や理由は違っても、バスケを好きな気持ちはみんな一緒のはずでしょ?」
「――っ、」
ユウのその言葉に俺は、返す言葉がなかった。
秀司がバスケ部を辞めて、何で俺はバスケをやっていたのか、見失っていた。
バスケが好き。その気持ちに嘘はない。
――彼女のその言葉が、ずっと晴れなかった俺の心を救ってくれたんだ。
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