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早速、ユウのSNSを登録する。
シンプルだが可愛らしいメモ帳に、明るいあの性格とは裏腹な、控えめに小さく書かれた、形の整った綺麗な文字。
フルネームで登録されていたが、漢字がややこしくて、簡単に『ユウ』と登録した。
家に帰ったら、電話をかけても良いだろうか。
最初からいきなり電話をかけたら、さすがにユウは驚くかな。それとも怒るだろうか。
「……ハハッ、」
想像していたら何だか楽しくなってきて、思わず笑ってしまった。
不思議だ。ここのところずっとテンションが低くて、何をしても楽しくなかったのに。
少し、気持ちが楽になった気がした。
ユウが渡してくれたバスケットボールを手にして、数メートル先のゴールを見つめる。
指先から伝わる、触り慣れたボールの感触。
何度も何度もこの公園に来ては、シュート練をしてきた。
ただ、秀司に追いつきたかった。
あいつと同じコートに立って、一緒にプレーしたかった。
バスケを始めた頃は、それだけのために練習を頑張っていた。
俺はいつの間にか、そんな幼い頃の俺の純粋な気持ちを、忘れてしまっていたのかもしれない。
秀司に追いつくだけではなく、追い越したい。
あいつに勝ちたい。レギュラーになりたい。
ここ最近の俺はずっと、そんなことばかり考えていた気がする。
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