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部室棟に戻ると、一年は全員帰ってしまったようで、同級生である二年だけが何故か全員残っていた。
「――おっ、やっと帰ってきた。お説教か?」
パイプ椅子に逆向きに座りながら、ニヤニヤとこちらを見てくるのは、俺の同級生の太一(たいち)だ。
太一は、小学校のミニバスからの付き合いで、俺や秀司とはまあ腐れ縁みたいなものだ。
いつもこうやって俺のことをからかってくる。
「ちげーよ。お前らこそ、せっかくの半日練なのになんでまだ残ってんだよ。」
よく見たら、太一を含めて全員がもう練習着から着替えていて、いつでも帰れるような格好だ。
「いや、光輝が帰ってくるのを待って、ちょっと話し合おうってことになってさ。」
「なにを?」
「バスケ部の今後のことを、だよ。」
いつもの太一とは打って変わり、珍しく真面目な口調で太一が言う。
「キャプテン、まだ決めてないだろ。このままだとチームをまとめる役がいないままだ。
夏休み明けには新人戦もあるし、このままの状態で先輩たちのように勝っていけるとは思えねー。」
「それは……」
太一の言うことはもっともだ。
このチームにはキャプテンがまだいない。
例年、夏の大会で三年生が引退し、夏休みからの練習で二年生主体の新チームになると同時に、キャプテンが決まる。
うちの部は、監督である顧問の先生の意見もあるが、基本的に俺たち部員の話し合いの結果で出た意見が尊重される。
夏休み前までは、次期キャプテンは秀司以外にはあり得ないと、部員全員が思っていた。
高身長に恵まれ、二年生の中で唯一レギュラーに選ばれたその実力と、冷静な思考。
悔しいが、全部俺には無いものだ。
その秀司がバスケ部を辞めて二週間。
キャプテンを決めることは、俺たちがずっと避けてきた問題だった。
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