2.

5/17
前へ
/45ページ
次へ
部室棟に戻ると、一年は全員帰ってしまったようで、同級生である二年だけが何故か全員残っていた。 「――おっ、やっと帰ってきた。お説教か?」 パイプ椅子に逆向きに座りながら、ニヤニヤとこちらを見てくるのは、俺の同級生の太一(たいち)だ。 太一は、小学校のミニバスからの付き合いで、俺や秀司とはまあ腐れ縁みたいなものだ。 いつもこうやって俺のことをからかってくる。 「ちげーよ。お前らこそ、せっかくの半日練なのになんでまだ残ってんだよ。」 よく見たら、太一を含めて全員がもう練習着から着替えていて、いつでも帰れるような格好だ。 「いや、光輝が帰ってくるのを待って、ちょっと話し合おうってことになってさ。」 「なにを?」 「バスケ部の今後のことを、だよ。」 いつもの太一とは打って変わり、珍しく真面目な口調で太一が言う。 「キャプテン、まだ決めてないだろ。このままだとチームをまとめる役がいないままだ。 夏休み明けには新人戦もあるし、このままの状態で先輩たちのように勝っていけるとは思えねー。」 「それは……」 太一の言うことはもっともだ。 このチームにはキャプテンがまだいない。 例年、夏の大会で三年生が引退し、夏休みからの練習で二年生主体の新チームになると同時に、キャプテンが決まる。 うちの部は、監督である顧問の先生の意見もあるが、基本的に俺たち部員の話し合いの結果で出た意見が尊重される。 夏休み前までは、次期キャプテンは秀司以外にはあり得ないと、部員全員が思っていた。 高身長に恵まれ、二年生の中で唯一レギュラーに選ばれたその実力と、冷静な思考。 悔しいが、全部俺には無いものだ。 その秀司がバスケ部を辞めて二週間。 キャプテンを決めることは、俺たちがずっと避けてきた問題だった。 .
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加