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「秀司がバスケ部を辞めたのは突然のことだったし、ショックだったけど……俺たちも前に進まないといけないだろ。 負けちまった先輩たちの分まで、俺らが頑張らないと。」 いつもはお調子者のくせに、こういう時はしっかりしてるんだよな、太一は。 見ると、他の二年たちも同じ気持ちのようだった。 「ちなみにだけど、俺たちは……光輝にキャプテンをやって欲しいと思ってる。」 「いやいや待てって!前にも断ったけど、俺はチームの司令塔とかでもないし、自分勝手なプレーも多いし、キャプテンには向いてないって。」 自分でも自覚している。 プレー中も、みんなは俺の意見を優先してくれて、自由にプレーさせてもらってる。 それに俺はすぐ感情的になるし、こんな俺にキャプテンが務まるわけがない。 「いや、お前しかいないよ、光輝。」 「だからっ、なんでそこまで」 「秀司がずっと言ってたからだよ。キャプテンは自分よりも光輝の方が向いてる、って。」 太一のその言葉に耳を疑った。 「おい、何言ってんだよ。秀司がいつそんなことを……」 「二年に上がる少し前から、次のキャプテンの話になるたびに秀司は言ってた。 俺たちや先輩たち全員が次のキャプテンは秀司だって言っても、あいつは『キャプテンは俺よりも光輝の方がいい、あいつにしてください。』って。 俺なんかがキャプテンになっちゃいけない、って。」 「なんだよそれ……俺の前でそんな話一度も……」 そんな風に言ってたなんて、俺は全く知らない。 いつ言ってたんだ、そんなこと。 俺たちが一年の頃は、秀司は毎日の部活の後に必ず自主練するほどバスケに夢中だった。 どんなにキツい練習の日も、暑い日も寒い日も、必ず残って練習していた。 その表情は、いつでも楽しそうだった。 だが、楽しそうにバスケをする姿が見られなくなったのが、二年に上がる頃だった。 絶対に練習を休まなかったあいつが、春休み中の練習を何度か休んだ。 練習や練習試合中にミスが目立つようになった。 気づけばあいつの顔から、楽しそうな表情は消えていた。 .
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