5人が本棚に入れています
本棚に追加
「あー、くそっ!」
イライラして、適当にシュートを放った。
俺の手から離れたバスケットボールは、放物線を描いてゴールへ。
しかしボールはリングに当たってしまい、ゴールに入ることはなかった。
……まあ、あんなフォームじゃ入るわけがないけど。
「はあ……」
ゴールに入らなかったボールが跳ねる音が、辺りに寂しく響く。
もう6時をとっくに過ぎていて、さっきまでいた子供達もいつの間にか帰ってしまったらしい。
気づけば辺りには誰もいなくなっていた。
――この駅前の公園のバスケットゴールは、俺がバスケを始めてからずっと使っている。
俺より先にバスケを始めた秀司に少しでも追いつきたくて、密かにこの場所で練習をしてきた。
背も高くて、器用で、昔から何でもできてしまう秀司はやっぱりバスケも上手くて。
最初はただ、あいつに憧れてバスケを始めたんだ。
幼馴染みだし、お互いのことはよく分かってる。だからプレー中の息も合って、一緒にバスケをプレー出来るのは楽しかった。
でも、いつしか『あいつより上手くなりたい』『負けたくない』って思うようになってた。
それを自覚したのは、中学に入ってから。
幼馴染みで親友だった秀司を、いつの間にかライバル視していた俺は、分かりやすくあいつを避けるようになって。
それを、勘のいい秀司はすぐに気づいたのか、あいつも俺と距離を取るようになった。
.
最初のコメントを投稿しよう!