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教師の俺と、生徒の聖人が抱き合える場所は、限られているから、人目につかないよう用心しながら、俺の家に橘を連れ込んだ。
橘聖人。
れっきとした男子で、俺の勤める高校の生徒。
いろんな意味で面倒な相手で、告られた時は正直迷惑でしかなかったのに、断るのが惜しかったのは、彼が絶世の美少年だったからだ。
興味本位で告白を受け入れて、気づけば、俺も橘に夢中になっているのだから、救いようがない。
「だめ……広瀬せんせ……放して」
「俺のこと、好きなのに? なんで?」
「だって……はずかしい……」
俺の腕の中で、俯き、震える制服姿の橘。
抱擁になれない年齢不相応な初心さが、俺の庇護欲と嗜虐心をそそるなんて、気付いてさえいない。
「これぐらいで恥ずかしがるな」
「はい……」
もっと困らせたくて、彼のなめらかな頬に唇をかすらせ、そのまま首筋に寄せ、鼻をこすりつけた。
聖人からはいつも甘い体臭が漂っている。
一度かいだら癖になる、媚薬のようなそれに囚われて、淫行寸前の衝動にかられているのは、俺のほうだ。
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