なんて幸せな、ニューイヤーズ・イブ

14/17
248人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「え! どうした、橘」  気がついたら僕は、センセイの腰あたりにしがみついていた。 「やだー、センセイ、ここにいてー」 「すぐ戻ってくるって」 「センセイ、好きなの。こんな酔っぱらい、もう、きらい?」  ジェットコースターみたいに気持ちが乱高下する。  センセイを好きすぎて、苦しい。  相手にされてないのは、分かってる。  物珍しさからの、高校限定の、恋人ですらない、名前のつけられない関係。  それでもいいから、傍にいさせてもらってるのに。 「橘」  センセイはため息をこぼして、椅子に腰を下ろした。  両手で軽々と僕を抱き上げて、センセイをまたぐよう向かい合わせに僕を座らせ、僕をじっと見つめた。 「きらいになんてならないから、落ち着きなさい」  センセイは両方の二の腕を、大きな手のひらで撫でる。  まるで駄々をこねた子どもを慰めるようだ。 「僕、子どもじゃ、ない」 「ああ。子どもじゃない。でも俺の大事な生徒だ」  生徒。  それって、学校には僕以外にもっとたくさんいるよね。 「……他の子も大事なくせに」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!