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「え! どうした、橘」
気がついたら僕は、センセイの腰あたりにしがみついていた。
「やだー、センセイ、ここにいてー」
「すぐ戻ってくるって」
「センセイ、好きなの。こんな酔っぱらい、もう、きらい?」
ジェットコースターみたいに気持ちが乱高下する。
センセイを好きすぎて、苦しい。
相手にされてないのは、分かってる。
物珍しさからの、高校限定の、恋人ですらない、名前のつけられない関係。
それでもいいから、傍にいさせてもらってるのに。
「橘」
センセイはため息をこぼして、椅子に腰を下ろした。
両手で軽々と僕を抱き上げて、センセイをまたぐよう向かい合わせに僕を座らせ、僕をじっと見つめた。
「きらいになんてならないから、落ち着きなさい」
センセイは両方の二の腕を、大きな手のひらで撫でる。
まるで駄々をこねた子どもを慰めるようだ。
「僕、子どもじゃ、ない」
「ああ。子どもじゃない。でも俺の大事な生徒だ」
生徒。
それって、学校には僕以外にもっとたくさんいるよね。
「……他の子も大事なくせに」
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