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それは中学二年生の年末、彼が市外の高校で勢力を二分する『近隣最強』を謳うチームに入ることに決めたのがきっかけだった。
彼の傍に居続ける為、また彼を驚かせる為に、私は彼より一足早くそのチームに入った。
あとは彼が来るのを待つだけだったんだけど、物事は思い通りにいかないモノ…予想だにしない人物が、私達の前に現れたの。
ケンカで負け知らずだった彼に初めて土を付け、同年代だと右に並ぶ者はいないっていう強さを持っている…紅い髪と紅い瞳を持った男子だった。
紅髪の彼とその仲間達が現れたことにより、事態は急展開を見せていき、遂にはチームに入る予定だった彼がそれを取り止める意思を見せ、ヘッドもこれを受け入れた。
彼が入らないなら、私がここにいる意味はない。すぐに私もチームから抜ける意思を示したわ。あっさりと認めてくれたのは有り難かったわね。
その後、彼が紅髪の彼に詳細を尋ねていく流れの中で、私は彼について意外なことを知ったの。
「指輪なんだから、指に嵌めるのは当たり前だろ?」
「バレンタイン?何だよ、ソレ」
世の中で一般的な恋愛事…彼は、それを一切知らなかったのよ。
正直、呆れちゃったわね。私の好きな男子(ひと)はそんなことも知らなかった、なんて思いもしなかったからね。
けど、そのおかげで私が一番知りたかったことも知ることができたのは大きかったなぁ……
「俺はチョコが嫌いなんだよ。あんな甘ったるいの、渡されても困る。嫌いなモン渡されて喜ぶヤツがどこにいるんだよ?」
ちょっとだけ、ホッとしている自分がいた。
でも、これでようやく納得できた。
綺麗な包み紙を開けて中身を見たら、そこから嫌いなモノが顔を見せる…嫌がらせのようなことをされて、「受け取れ」なんて言うのは無理な話よね。
それなら、彼がチョコをゴミ箱に捨てるのも当然だし、事情を知らない女子が泣くことになるのも当然の流れかもしれない。
だけど、私は敢えてこう言った。
「流石に捨てるのはやり過ぎ。次からは気をつけないとね」
「そうだな。バレンタインに渡されるモノの意味も分かったことだし、極力捨てないようにする」
欲しいものは、全て整った…
来年のバレンタインデー。今から楽しみで仕方がない、私がそこにいた。
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