一髪千鈞

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「お前ら最近仲良いな」 「別に普通」 「別に今までと変わりませんが」 「ふーん」 机の上をペンの先でカツッカツッと叩く。 怖くないのに何故かその音が緊張感を増幅させる。 私とKYOUは仕事初めの前に社長に呼び出され今事務所の社長室に居る。社長の机の前で2人立たされていた。 「お前風邪はもう大丈夫なのか?」 「うんもう全然へーき。ゆっ萱島が看病してくれたから」 名前を言いかけるな! 「ほーん」 ふがほになった!何故に?! カツッ…カツッ…カツッ…カツッ… 「お前ら…付き合って」 「いません」 「ねーよ」 「なんだ人が喋ってる言葉に被せるな」 新年を二人で裸で一緒に迎えましたなんて口が裂けても言えない。 「すみません」 特に呼び出されることは珍しい事ではないが2人一緒に呼び出される事は滅多にない。 「仲良かったら悪いのー?」 「別にそういうわけじゃない。仲良くてなんぼだ。因みに付き合ったらダメとかも言ってない。報告はするようにといつも言ってるはずだ。柚季がちゃんと面倒見てくれてるってことでいいんだな」 「あ、はい」 社長は何が言いたいんだろう。 含みを持たせた言い方。 「柚季、変な噂とか立つ前にあまりコイツのマンションに行くんじゃない」 もしや…バレてるんじゃあないか? 「仕事の話してるだけじゃん。マネージャーとして」 もしや…もう噂は立ってて社長が揉み消してくれてるんじゃあないのか? 「はたから見れば、KYOUと女がマンションに一緒に出入りしている。何も知らない奴らはどう思う?男と女が一緒の部屋に居る。芸能人なら尚更じゃないのか?」 「すみません。自分の行動が軽率でした。もう部屋には行きません。話というのはコレですか?」 斜め上から凄く視線を感じるのは気のせいかしら 「あぁ、それでなんだが、葵のマネージャーが忌引きで居ない、一週間程柚季に頼みたい」 はい? 「え!?俺の…俺はどうなんの?」 「一週間だ。今KYOUはそんなに忙しくないだろう。ドラマの撮影だけだ。葵と兼用で頼みたい。何、たった一週間だけだ。来週には戻って来る」 「一週間だけなら自分でやらせりゃいいじゃん」 「今葵の方がちょっと立て込んでてな。頼めるのが仕事の出来る柚季しかいない」 「葵に萱島を売るの?!社長知ってるでしょ?!葵がどんな奴か!」 何言ってるの? KYOUが凄く怒ってるし言ってる意味がわからない。 売る? 「葵にはキツく言ってある。次は無いってな。大丈夫だ。アイツも反省してる。柚季頼めるな?」 「社長!」 「分かりました」 「ありがとう。助かるよ。話は以上だ。あ、KYOUのマンション張られてるぞ、気をつけろ」 なんかよくわからないけど社長が大丈夫って言うんなら大丈夫なのかな。 社長の言う通り今ちょうどKYOUの仕事は落ち着いていて来月からまた忙しくなる。時期的にはいいかと。 社長室を退出すると先にスタスタ事務所を出て行く。 なんであんなに怒ってたんだろう別に一週間だけじゃない 車に乗り込むと昼から撮影の為少し時間が空いた。 「何か食べます?あ、買って来ましょうか?」 一緒に居るとこを見られたらダメだな。 「いらない」 あー…まだ怒ってる
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